秘密保護法及び関連法令の最低限の見直し並びに情報開示の拡大のための対策を求める意見書

2019年6月20日
日本弁護士連合会

 

本意見書について

日弁連は、2019年6月20日付けで「秘密保護法及び関連法令の最低限の見直し並びに情報開示の拡大のための対策を求める意見書」を取りまとめ、同月24日付けで、内閣総理大臣、法務大臣、衆議院議長、参議院議長、衆議院情報監視審査会委員、参議院情報監視審査会委員、独立公文書管理監及び内閣府公文書管理委員会委員長に提出しました。


本意見書の趣旨

当連合会は、これまで情報自由基本法の制定による知る権利の保障を求め、その一環として特定秘密の保護に関する法律(以下「秘密保護法」という。)の廃止を含めた抜本的見直しを求めてきた。秘密保護法施行後においても、衆議院及び参議院の情報監視審査会(以下「両院情報監視審査会」という。)に関する意見書(2016年9月15日付け「情報監視審査会平成27年年次報告書に関する意見書」、2017年9月15日付け「情報監視審査会平成28年年次報告書に関する意見書」、2018年10月23日付け「衆議院情報監視審査会平成29年年次報告書に関する意見書」)などを公表してきたが、求めてきた改正についてはいまだその大部分が実現していない。  


秘密保護法第18条第1項に基づき政府が2014年10月14日に閣議決定で定めた「特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施に関し統一的な運用を図るための基準」(以下「運用基準」という。)のⅥは、「特定秘密保護法の施行後5年を経過した場合においては、その運用基準について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に応じて所要の見直しを行うものとする。」としている。そして、内閣府独立公文書管理監や情報監視審査会の具体的構想は秘密保護法の成立後にまとめられたものであり、これらの機関については秘密保護法案の審議過程では具体的に検討する機会が全くなかった。それに加え、運用基準の改正だけでは秘密保護法の問題性は根本的には解消し得ない。したがって、秘密保護法も含めた関連法令の改正が必要と考えられる。そこで、秘密保護法及び関係法令について、当連合会がこれまで情報監視審査会の活動などに関し求めてきた見直しも含め、少なくとも以下の見直しを行うことを求めるものである。


1 特定秘密記載文書については、全て国立公文書館等に移管することを公文書等の管理に関する法律(以下「公文書管理法」という。)、秘密保護法又はその他の特別法において規定すべきである。


2 特定秘密の指定要件である非公知性については、不特定多数の人に事実上知られるに至った場合は非公知性が失われるとする規定を秘密保護法に設けるべきである。


3 秘密保護法、衆議院情報監視審査会規程及び参議院情報監視審査会規程又は公益通報者保護法において、両院情報監視審査会等を通報先とする内部通報者保護規定を設けるべきである。


4 適性評価を行う場合であっても、取得の対象となる情報を、評価対象者の秘密取扱いに適するものに厳しく限定すべく、秘密保護法の改正を行うべきである。また、適性評価の実施に関し、評価対象者が不同意とした場合や、評価の結果不適格とされた場合に不利益を受けないことを担保する制度を設けるべきである。


5 情報保全監察室においては、外部からの職員採用や、幹部職員については出身機関に戻らないこととする「ノーリターン・ルール」を検討するなどして情報保全監察室の独立性と専門性を確保すべきである。


6 各議院の情報監視審査会のいずれかからの求めがあったときは、行政機関は、全ての非開示情報等の報告等をしなければならない旨の規定を国会法等に設けるべきである。

また、特定秘密に関して、「サードパーティールール」(第三者に情報を提供する場合、当該情報を提供した外国の情報機関等の了承を事前に得た上で行う原則)に係る特定秘密であることを理由とする提供拒否は原則として許されないとした上で、提供を拒否することができる場合について明確な要件や手続が定められるべきである。


7 国会法等を改正して、両院情報監視審査会及び内閣府独立公文書管理監に、特定秘密の指定の是非のみならず各行政文書に記載された情報が特定秘密として法律の保護の対象となり得るものかどうかについて審査する権限を持たせるべきである。また、両院情報監視審査会及び内閣府独立公文書管理監において、特定秘密以外の秘密の指定の適否も審査し得るようにすべきである。


8 両院情報監視審査会における調査の実効性を確保するため、衆議院情報監視審査会規程及び参議院情報監視審査会規程に、特定秘密の提出又は提示の要求のための採決要件を緩和した明文の規定(例えば委員2名以上の賛成)を置くべきである。


9 国民が秘密指定の是非を争うことができる制度を設けるべきである。


(※本文はPDFファイルをご覧ください)