産業構造審議会知的財産分科会特許制度小委員会報告書 「実効的な権利保護に向けた知財紛争処理システムの在り方(案)」に対する意見書

2019年2月6日
日本弁護士連合会

 

本意見書について

産業構造審議会知的財産分科会特許制度小委員会では、2018年10月から権利保護の実効性を高めるための知的財産制度の見直しが検討されており、この度、同小委員会の報告書案(「実効的な権利保護に向けた知財紛争処理システムの在り方(案)」)が取りまとめられ、特許庁によりパブリックコメントに付されました。
当連合会はこれに対する意見書を取りまとめ、2019年2月6日付けで特許庁に提出いたしました。



本意見書の趣旨

1 訴訟提起後に、当事者の申立てにより、一定の要件の下で、裁判所が、中立公正な専門家に対し、相手方当事者の工場等において必要な資料を収集して報告書を作成する旨の命令をすることができる制度を設けることには賛成する。
ただし、同制度の導入に当たっては、我が国の証拠収集手続を充実させるべき観点からは、命令の発令要件(特に「補充性」要件)を過度に厳格なものとすべきではないと考える。また、申立人代理人弁護士のみに営業秘密を開示する、いわゆるアトーニーズ・アイズ・オンリーの取扱いを可能とすべきである。 
さらに、証拠収集に関する決定自体に対して不服申立てを認めることは適切でない。また、命令の要件及び効果の明確化や命令の公開を含めて、制度の予測可能性を高めるために適切な措置を講ずるべきである。


2 損害賠償額の算定方法の見直しについて、一層の改善を図るべく、改めて損害賠償額算定方法の在り方について検討を行うことには異論はない。
特許法第102条第1項と第3項の重畳適用の可否に関する法改正の提案については、その前提となる立法事実や改正の趣旨、重畳適用がされるための要件をより具体的に検討するとともに、明確にすべきである。
特許法第102条第2項と第3項の重畳適用については、第1項における議論とは別個独立して重畳適用の可否及び要件について検討し、重畳適用を認めるとすればその要件を明確にすべきである。
特許法第102条第3項については、相当実施料増額に働く考慮要素を明確化する改正を行うのであれば、改正の趣旨やその要件を明確にすべきである。


3 紛争解決手段の選択肢の整備として継続的な検討事項とされた二段階訴訟制度は、特許権侵害事実の確認後における当事者間の和解決着を促す仕組みとして一考に値するので、引き続き検討を重ねられたい。



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