死刑制度に関する政府世論調査に対する意見書

2018年6月14日
日本弁護士連合会

 

本意見書について

当連合会は、「死刑制度に関する政府世論調査に対する意見書」を取りまとめ、2018年7月23日に安倍晋三内閣総理大臣、2018年7月25日に上川陽子法務大臣に提出しました。


本意見書の趣旨

当連合会は、2019年度(平成31年度)の実施が予想される死刑制度に関する政府世論調査に向けて、以下のとおり、意見を述べる。


1 死刑制度に関する主質問の修正
死刑制度に関する主質問「死刑制度に関して、このような意見がありますが、あなたはどちらの意見に賛成ですか。」の回答選択肢を、2014年(平成26年)11月実施の政府世論調査(以下「2014年調査」という。)の選択肢である(旧)から(新)に改めるべきである。
(旧)ア 死刑は廃止すべきである
   イ 死刑もやむを得ない
(新)ア 死刑は廃止すべきである
   イ どちらかと言えば、死刑は廃止すべきである
   ウ どちらとも言えない
   エ どちらかと言えば、死刑は残すべきである
   オ 死刑は残すべきである


2 質問の追加
(1) 死刑廃止を可能にするための条件又は手続に関する質問
死刑廃止を可能にするための条件又は手続に関する質問として、以下のような質問を追加すべきである。
問 死刑廃止を可能にするか死刑廃止をしやすくなるための条件又は手続としてどのようなことが考えられますか。この中から、あなたの考えに近いものをいくつでもあげてください。
   ア 犯罪被害者・遺族に対する支援が一層充実したものとなること
   イ 死刑に代えて、現在の仮釈放の開始時期を10年とする無期懲役より重い刑が導入されること
   ウ 犯罪予防のための取組がより充実すること
   エ 犯罪者の更生支援がより充実すること
   オ 国際社会から我が国に対し死刑廃止を強く求められること
   カ 分からない
   キ その他(    )
問 死刑には凶悪犯罪を抑止する効力がないのではないかという議論があります。そこで、一定の期間試験的に死刑を停止して、これによって凶悪犯罪が増えるかどうかを確かめた上で、死刑を残しておくかやめてしまうかを決めるという試みが考えられます。このような方法に賛成ですか、反対ですか。
   ア 賛成
   イ 反対
   ウ どちらとも言えない
(2) 死刑制度関連情報の認知度に関する質問
国民の死刑制度に関する情報の認知度を把握するための質問(死刑執行方法及び死刑執行数、凶悪事件発生数、死刑廃止に関する国際的動向等に関する知識を問う。)を追加すべきである。


3 世論調査結果の評価・公表
2014年調査における回答回収率は、従前の最低回収率64.8%を更に下回る60.9%にすぎない。性・年齢層・都市規模別の回収率に大きな差異があり、回収標本は、国民の縮図とは言い難い。政府は、このような世論調査の結果を死刑廃止に関する議論をしないための根拠に使うべきではない。
また、政府は、世論調査結果を公表する際、単に個々の質問に関する回答割合を示すのではなく、少なくとも死刑制度に関する主質問の回答割合に続いて将来の死刑制度存廃に関する回答割合を明示するなどし、世論調査の結果が誤解されることのないよう十分に配慮すべきである。




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