最高裁判所第7回「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」に対する意見書

 

2017年10月18日
日本弁護士連合会


 

本意見書について

2017年7月21日付けで最高裁判所が公表した第7回の「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」(以下「第7回意見書」という。)に対し、日弁連は、2017年10月18日付けで意見書を取りまとめ、最高裁判所ほかへ提出しました。

 

本意見書の趣旨

1 最高裁判所が本年7月21日に公表した裁判の迅速化に係る検証に関する報告書(「第7回報告書」)は、第6回報告をさらに掘り下げ、争点整理における裁判所と当事者との間の認識共有、家事調停手続における裁判官の積極関与、審判や人事訴訟との関係など家庭裁判所の手続全体としての運用改善について、より具体的な検証をしている。実情調査に基づき継続的に運用改善を図る姿勢には当連合会も異論がない。しかし、裁判所が著しく繁忙であることがうかがえ、運用上の方策のみならず裁判所の人的物的基盤のより一層の整備を明確に位置づけるべきである。

 

2 民事第一審訴訟事件では、争点整理に要する期間が若干長くなっており、係属期間2年超の事件数も増加しており、質的困難化を示すものである。報告書は、裁判所と当事者間で争点の認識共有が円滑に行われていないことがうかがわれるとするが、質的困難化も影響していると考えられる。認識共有に関する手続面の検討のみならず、裁判官の増員など裁判所の態勢面の強化をより明確に打ち出すべきである。

 

3 刑事第一審事件は、裁判員対象事件が平成27年以降、自白・否認の別に関わらず再び長期化しており、要因として公判前整理手続期間の長期化が指摘されている。しかし、刑事裁判手続においては被告人の権利擁護が重要であり、公判前整理手続のあり方のみならず、裁量保釈制度の拡充なども加味して検証する必要がある。

 

4 家事事件は、別表第一審判事件の新受件数が後見関係事件の大幅な増加の影響で更に増加する一方で、別表第二事件の新受件数は緩やかな増加傾向にあり、平均審理期間は高止まり状態又は緩やかに長期化している。婚姻関係事件や子の監護に関する事件でも審理期間の長期化が見られ、家庭裁判所全体の負担増加・繁忙度の進行は明らかである。負担増加・繁忙度の進行が家庭裁判所全体の事件処理に影響している可能性も慎重に検討すべきである。調停では評議を通じた裁判官関与の充実の取組が行われているとするが、法的観点が過度に重視されて進行が硬直化し、調停における解決の自主性が損なわれることのないようにすべきである。

 

5 今後に向けて、民事事件においては争点整理に関する認識共有について意識の浸透を図ることが重要であり、認識共有の支障となる事情等について今後さらなる検証を行うべきである。他方で、紛争の質的困難化が争点整理期間に影響を及ぼしていることも明らかであり、事件類型毎に具体的に踏み込んで検討対象とするほか、裁判所の態勢面の要因を意識すべきである。
刑事事件については裁判員裁判の導入以後の統計数値や諸問題を踏まえて具体的な検証を行うべき時期である。
家事事件については手続運用面の検証は進められているものの、裁判官・書記官・家裁調査官・調停委員の繁忙度や、待合室などの設備の問題などについては触れられていない。家庭裁判所の負担増加は明らかであるから、基盤整備の観点を意識した検証が必要である。

 

6 今回の報告は手続面・運用面の運用改善に向けた問題意識を明らかにしているが、裁判所及び弁護士の立場からの検討となっている。今後は関係諸機関において、国民の裁判所利用に障害となっている諸要因を意識した施策検討を行うことにより、権利救済が十分に確保される司法制度の実現を目指す姿勢をより強く打ち出すことが必要である。

 

 

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