「文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会中間まとめ」に対する意見書

 

2017年3月16日
日本弁護士連合会

 

 

 

本意見書について

政府の知的財産戦略本部が取りまとめた「知的財産推進計画2016」において、イノベーション促進に向けた権利制限規定等の検討については、「次期通常国会への法案提出を視野に、その効果と影響を含め具体的に検討し、必要な措置を講ずる」とされました。また、「日本再興戦略2016」においても、IoT・ビッグデータ・人工知能等の技術革新等を活用する「第4次産業革命」を今後の日本の生産性向上の鍵と位置づけ、これに対応するための知財システムの構築の一環として同様の対応が求められています。

 

以上を受けて、文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会では、新たな時代のニーズに的確に対応した権利制限規定の在り方、教育の情報化の推進等について、検討が行われています。

 

この度、2017年2月24日の同小委員会において、中間まとめが取りまとめられ、意見公募が行われました。

 

日本弁護士連合会は2017年3月16日付けでこれに対する意見書を取りまとめ、同日付けで文化庁に提出しました。

 

本意見書の趣旨

第1 「第1章 新たな時代のニーズに的確に対応した権利制限規定の在り方等」について

1 著作権法における権利制限規定の柔軟性が及ぼす効果と影響を吟味した結果、日本型の「柔軟性のある権利制限規定」として、明確性と柔軟性のバランスを備えた制度設計を行い、権利者に及び得る不利益の度合い等に応じてニーズを3つの行為類型に分類し、行為類型ごとに適切な柔軟性を確保した規定を整備するとした本報告書の方向性に賛成する。

 

ただし、明確性を過度に重視するのではなく、将来の著作権を取り巻く環境の変化等を見据えた明確性と柔軟性のバランスの取れた条文にするべきである。

 

2 なお、本報告書で優先的な検討課題とされた6つのニーズを念頭に、柔軟性のある権利制限規定を条文化するべきであり、早急に条文案を公表すべきである。

 

3 本報告書は、ソフトローの活用等や著作権法に関する教育・普及啓発により法の適切な運用を確保することを提案しているが、更に具体的検討を行うべきである。

 

4 本報告書は、著作物の円滑な利用促進に向けた課題が指摘されているが、これらについても更に具体的検討を行うべきである。

 

第2 「第2章 教育の情報化の促進等」について

1 授業の過程における教材・参考文献や講義映像等の送信に関して、オンデマンド型の公衆送信などの異時公衆送信を、権利者への補償金請求権を付与した上で、著作権法35条の権利制限の対象とするとの本報告書の提言に賛成する。

 

2 また、補償金の支払に係る手続に関して、文化庁長官の指定する団体による窓口の一元化を図るべきこととする本報告書の方向性に異存はないが、補償金制度が円滑かつ適切に実施される制度及び運用が期待される。

 

3 学校教育の目的上必要と認められる限度において、権利者の許諾なく著作物を教科用図書に掲載することを認める著作権法33条の適用対象に、デジタル教科書を含ませるように必要に応じて規定の見直しを行うことが適当であるとする本報告書の提言に賛成する。

 

(※本文はPDFファイルをご覧ください)