「あるべき労働時間法制」に関する意見書

 

2016年11月24日
日本弁護士連合会

  

本意見書について

日本弁護士連合会は、この度、「『あるべき労働時間法制』に関する意見書」を取りまとめ、2016年11月24日付けで、厚生労働大臣に提出いたしました。

 

本意見書の趣旨

1 1日8時間・1週40時間の労働時間規制の原則を維持しつつ、三六協定による労働時間の延長の限度について、次のとおり法律上規制することにより、労働時間に量的上限規制を設けるべきである。
(1) 第一段階として、直ちに、現在告示の形式で規定されている「労働基準法第三十六条第一項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準」を労働基準法に規定するとともに、いわゆる特別条項に関する規定を廃止すべきである。
(2) 第二段階として、段階的に、1週・年間等の延長限度の各基準を厳格化するとともに、1日の労働時間の延長限度についても法定化すべきである。延長の限度基準としては、将来的には、1日2時間(1日の最大労働時間10時間)、1週8時間(1週の最大労働時間48時間)、年間180時間程度を目指すべきである。ただし、職務の性格等により上記の制限時間の超過が必要やむを得ないと認められる場合、その限度において政令をもって職種ごとに延長可能時間の範囲を規定することができることとすべきである。

2 次のような「勤務間インターバル規制」について、可能な限り早期に、導入すべきである。
(1) 使用者は、始業時刻が固定されているか否かを問わず、勤務開始時点から24時間以内に連続11時間以上の休息時間を付与しなければならない。
(2) 勤務間インターバル規制は、裁量労働制をはじめとするみなし労働時間制の適用対象者や管理監督者にも適用されなければならない。
(3) 職務の性格等により上記の勤務間インターバル規制の不適用ないし緩和がやむを得ないと認められる場合、その限度において政令をもって職種ごとに規制不適用の範囲及び時間を規定することができることとすべきである。

3 時間外労働・休日労働の割増賃金率について、段階的に、引き上げるべきである。将来的には、時間外労働の割増賃金率としては5割、休日労働の割増賃金率としては6割程度を目指すべきである。

4 休日について、可能な限り早期に、「4週間を通じ8日以上かつ1年間を通じ104日以上」と労働基準法に規定することによって、全労働者に週休2日制を法律上保障すべきである。ただし、職務の性格等により上記の休日確保が困難な場合、その限度において、政令をもって規制不適用の対象及び範囲を規定することとすべきである。

5 労働時間の適正な把握について、直ちに、これが使用者の責任であることを労働基準法に明記するとともに、その違反に対する刑事罰を強化すべきである。

6 労働基準監督官の数について、可能な限り早期に、少なくとも2倍程度に増員し、労働基準法の遵守を徹底させる体制を整えるべきである。

 

(※本文はPDFファイルをご覧ください)