災害時の二重ローン問題対策(個人向け)の立法化を求める意見書

 

2015年11月19日
日本弁護士連合会

 

 

 

本意見書について

当連合会は、この度、意見書を取りまとめ、2015年11月26日に、金融庁長官、一般社団法人全国銀行協会会長、一般社団法人個人版私的整理ガイドライン運営委員会理事長宛てに提出しました。

 

本意見書の趣旨

1 国は、災害救助法が適用される災害発生時において、被災者(法人を除く。以下同じ。)の生活、住宅及び事業の再建並びに被災地の復興を迅速に進めるため、住宅ローン等の被災者に対する債権を、一定の要件の下に買い取る債権買取機構が直ちに発足し、速やかに活動を開始できるよう、あらかじめ立法措置を講じるべきである。


2 国は、災害救助法が適用される災害発生時において、前項の債権買取機構の設立と併せて、被災者の生活、住宅及び事業の再建のために、被災者たる債務者と金融機関等の債権者との間で債務の減免を含めた和解を成立させることを目的とした、裁判外紛争解決機関(以下「ADR機関」という。)が直ちに発足し、速やかに活動を開始できるよう、あらかじめ立法措置を講じるべきである。


3 国は、第1項及び前項の立法措置を講じるまでの経過措置として、東日本大震災における個人債務者の私的整理に関するガイドラインを、いわゆる特定調停手続における経営者保証ガイドラインの活用と同様に、東日本大震災以外の二重ローン被災者が特定調停手続における債務の減免のためのガイドラインとして活用できるように一般準則化すべきである。ただし、東日本大震災における同ガイドラインの利用状況を踏まえて、同ガイドラインの準用に当たっては、対象者に第1項の債権買取機構の対象債務者を含むとともに、支払不能要件の解釈等、その運用は同ガイドラインよりも更に柔軟になされるべきである。


4 国は、第1項ないし前項の立法措置又は制度の利用促進及び円滑な運用のために、金融機関に対し、機構による債権買取、ADR手続における和解の成立、特定調停案受諾等の実績等に応じて公的資金を導入する等、債権者が機構による債権買取、ADR手続、特定調停手続に協力することについて積極的な動機付けとなりうる施策を実施すべきである。


5 意見の趣旨第1項ないし第3項の立法措置又は制度が実現した場合には、国は、上記立法措置又は制度の条項において周知についても明文で盛り込むとともに、立法措置又は制度の周知に努めるべきである。具体的には、災害発生前においては、金融機関を通じて住宅・事業ローンの契約時に周知させる、災害発生後においては、罹災証明書の発行、被災者生活再建支援金の申請受付、義援金の配分、災害弔慰金の申請受付等の機会において、自治体を通じてリーフレット等の書面を配布する、被災者生活再建支援金の申請の際に自治体に住宅ローン等の債務の存在について確認させる、金融機関に対し、震災後の被災者からの弁済再開やリスケジュール等の相談時に制度説明を促すといった方法により、立法措置又は制度の確実な周知をすべきである。

 

 

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