出入国管理における身体拘束制度の改善のための意見書

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2014年9月18日 
日本弁護士連合会


 

本意見書について

日弁連では、2014年9月18日付けで、「出入国管理における身体拘束制度改善に関する意見書」を取りまとめ、11月7日付けで法務大臣に提出いたしました。

 

本意見書の趣旨

1 退去強制手続及び上陸審査手続における身体の自由の制約の基準の適正化
国は、退去強制手続及び上陸審査手続における身体拘束について、以下の趣旨の法改正を行うべきである。また、以下の法改正が行われるまでの間も、以下の趣旨に沿うよう基準を定め、運用するべきである。
(1) 収容を退去強制の確保に必要な最小限の場合に行うこととし、収容の必要のない場合や相当でない場合には収容をしてはならないことを明文化すること。
(2) 特に、被収容者が、未成年者、未成年者の監護・養育をする者、妊婦、傷病者等通院・入院等の必要のある者、人身取引被害者の可能性のある者その他社会的弱者である場合は、原則として収容しない、あるいは身体拘束から解放するものとすること。
(3) 難民認定手続や退去強制手続の対象となる者について、住居がないこと等を理由に収容されることを回避し、収容に代替する措置によって収容を必要最小限とするため、住居のない者に一時的な住居を提供するなどの社会内での生活を可能とする制度を構築する責務を負う旨を定めること。
(4) 日本に到着した時点であると在留中であるとにかかわらず、難民認定申請を行った者に対し、原則として難民申請者という在留資格を付与するなどして、申請中の者の地位を安定させ、難民認定について司法審査が行われている場合は原則として司法審査が終了するまでその地位を継続させ、身体拘束を回避すること。
(5) 退去強制令書に基づく収容期間について、比例原則の見地から制限を設けること。

(6) 送還の執行を物理的強制力を伴って行うことはできる限り回避し、その方法、その際の拘束具等の使用基準を、過度な人権制約をしないよう定めること。また、入国者収容所等視察委員会の視察対象に送還執行手続を含め、送還執行を後日検証可能とするよう、その全過程を可視化するなどして、送還の執行の適正を制度上担保すること。
(7) 上陸審査手続中の者の身体拘束に関し、その権限、要件、拘束しうる期間、拘束中の処遇について定め、身体拘束に対する迅速な救済手続も定めること。


2 退去強制手続及び上陸審査手続における適正手続の保障
国は、次の施策を行うべきである。
(1) 退去強制手続及び上陸審査手続について以下をはじめとする適正手続を保障する施策を行うべきである。
① 証拠の開示、仮放免許可や在留特別許可をしない理由を含めた理由開示、仮放免申請に対する審査基準の設置及び公表、仮放免の許否の迅速な審査、並びに適正な通訳の確保を行うこと。
② 無資力の者でも弁護士による法的援助を実質的に受けることができるよう、民事法律扶助制度を改善すること。
(2) 1項の収容の必要性、相当性を含む、収容の合法性についての事前の司法審査手続と、事後の迅速な司法的救済手続、身体拘束からの仮の解放についての判断に関する迅速な司法的救済手続を設けるよう法改正をすること。
(3) 本国への送還を忌避する者について、退去強制令書発付後、外部との連絡や弁護士に依頼する手段や時間的余裕を与えないままに、直ちに送還を実施することは避け、このことを法律にも明記すること。


3 身体の自由の制約に関わる職員の人権研修
国は、身体の自由の制約に関わる法務省入国管理局職員に対し、国際人権法、国際人権基準に関する詳細な研修を実施するべきである。


 


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