新食品表示制度に対する具体的な提言についての意見書

 

2013年2月14日
日本弁護士連合会


 

本意見書について

日弁連は、2013年2月14日に本件について意見を取りまとめ、2月19日に消費者庁長官及び原子力災害対策本部本部長へ提出いたしました。


 

本意見書の趣旨について

従来、食品表示を規制する法律は、厚生労働省が所管する食品衛生法、農林水産省が所管する農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(以下「JAS法」という。)など、法律も省庁も不統一であり、各々の法律の目的に合わせて、各行政庁がそれぞれに規制をしていたが、2009年に消費者庁が設置されて、食品表示が一元的に規制される体制が整ったことから、消費者庁において、2012年度末を目処に、食品表示の一元化を図ることを目的とする、食品表示法(仮称)の立法を準備している。



かかる状況を受けて、当連合会は、新たな食品表示法が、単に法律上の規定が統合されるにとどまらず、消費者のための食品表示の基本法として立法化がなされることを求め、次のとおり意見を述べる。



なお、消費者庁の立法作業前に開催されていた食品表示一元化検討会(以下「検討会」という。)の検討状況の問題点と消費者のためとなる食品表示法の基本的な在り方については、すでに、2012年11月15日付け「消費者のためとなる新たな食品表示法の制定を求める意見書」(以下「2012年意見書」という。)において、意見を述べているので、本意見書においては、新食品表示制度の具体的な内容について提言する。



第1 意見の趣旨
1 新たな食品表示法に一元化すべき制度について
新たな食品表示法には、次の(1)から(6)までの制度を統合すべきである。また、(7)から(10)までの制度については、新たな食品表示法の表示基準においてそれぞれに従うべき旨の注記を置くべきである。


(1) 食品衛生法第19条の表示の基準



(2) 同法第20条の虚偽・誇大表示広告の禁止



(3) JAS法第19条の13の品質表示基準



(4) 健康増進法第26条以下の特別用途表示



(5) 同法第31条の栄養表示基準



(6) 同法第32条の2の虚偽・誇大表示広告の禁止



(7) 酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律の「酒類の表示」



(8) 米穀等の取引等に係る情報の記録及び産地情報の伝達に関する法律(以下「米トレ-サビリティ法」という。)における「米、米加工品の販売や飲食店での提供における米の産地情報の伝達」



(9) 牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法(以下「牛トレーサビリティ法」という。)における「牛の個体識別番号」



(10) 計量法の「特定商品の特定物象量表記等」



2 法律の目的について
新たな食品表示法の目的として、消費者に、食品の安全を求める権利、食品の内容を知る権利、食品の選択の自由の権利、食品による健康増進の権利があることを明記し、これらの権利を確保するため及び不当な食品表示による弊害を防止するために食品表示に関する適正な規制を行うことを目的とすることを明記すべきである。



3 義務表示と法律事項
新たな食品表示法には、これまで義務表示とされてきた表示事項を法律に明記し、さらに、主務大臣が食品表示の基準を定めるにあたって配慮すべき基本原則として次の点を法律に明記すべきである。



(1) 消費者の安全確保のために必要かつ十分な内容とすること。


(2) 食品の内容を可能な限り正確にかつ分かりやすく表すものとすること。



(3) 消費者の自主的かつ合理的な選択を可能とするために必要かつ十分な内容とすること。



(4) 消費者の健康増進目的を達成するために必要かつ十分な内容とすること。



(5) 消費者の選択を誤らせるなどの紛らわしい表示や不正な表示を防止すること。



(6) 我が国及び諸外国の食文化に基づいて形成されてきた各食品の概念を尊重すること。



4 政令等の在り方について
内閣府令等に規定することが予定されている具体的な義務表示等の内容について、次のとおりとすべきである。



(1) 義務表示を緩和する例外規定の整理
遺伝子組換え食品、添加物、製造所所在地について義務表示を緩和する例外規定を整理して、食品表示をより正確にかつ分かりやすくすること。



(2) 義務表示の拡大
原料原産地を表示すべき加工食品を拡大し、新たに、水の表示、放射性物質のベクレル表示をする場合の表示基準を義務化すること。



(3) 適用範囲の拡大
インターネット販売、カタログ販売等の通信販売、自動販売機による販売について、容器包装にされた表示が見えない場合に表示に代わる代替手段の確保を義務付け、外食、中食に対して食品表示を義務化すること。



5 特別用途表示(許可表示)の在り方について
特別用途表示など許可表示(特定の表示について、許可を受けた者だけがその表示をすることができる制度)については、許可を得た者だけが当該許可にかかる表示をすることができると規定するだけでなく、許可を受けた者が許可内容以外の許可表示事項又は許可内容と紛らわしい表示をしてはならないこと、許可を得ない者が許可表示事項又はこれと紛らわしい表示をしてはならないことも新たな食品表示法において明記すべきである。



6 禁止表示の在り方について
食品の安全性に関わる虚偽・誇大表示、商品選択をゆがめる虚偽・誇大又は紛らわしい表示、健康増進効果についての虚偽・誇大表示の禁止規定を新たな食品表示法において統一的に規定すべきである。



7 広告規制の在り方について
(1)義務表示と矛盾する内容の広告、(2)許可表示に関し、許可を受けた者の許可内容以外の許可表示事項についての広告又は許可内容と紛らわしい広告、許可を得ない者の許可表示事項と同じ内容の広告又はこれと紛らわしい広告、(3)禁止された表示に該当する内容の広告についての禁止規定を新たな食品表示法において統一的に規定すべきである。



8 表示・広告違反に対する措置等について



(1) 義務表示、許可表示、禁止表示、広告規制違反に対する行政規制の在り方
義務表示等違反については、主務大臣による指示、指示に係る措置命令、公表を原則とし、重大な違反(安全に関わる表示違反や故意に基づく表示違反)については、指示を待たずに、販売等禁止、製品回収命令ができるとの規定を置くべきである。



(2) 調査権限
報告徴収、立入検査、収去、帳簿書類等の提出命令権限を執行機関に付与し、事業者が合理的根拠を示す資料を提出しない場合は、表示違反があったものとみなす立証責任軽減規定を置くべきである。



(3) 義務表示等違反に対する罰則
重大な表示違反について直罰とすべきである。



(4) 申出制度の拡充
JAS法の申出制度を基礎に、より拡充した制度とすべきである。この申出については具体的な表示違反に対する行政措置発動の要請以外に、表示基準等の内容の変更、追加などを含むこととし、具体的表示違反に対する調査結果の公表を行うものとすべきである。



(5) 執行体制の強化 
食品表示の適正化に関する監視指導、表示違反の摘発等の職務について、都道府県等食品衛生監視員によるもののほか、農林水産省の表示・規格指導官(以下「食品表示Gメン」という。)を消費者庁に移管し、上記職務の遂行を行うものとすべきである。



(6) 消費者食品表示監視員
食品表示の適正化に関する監視指導、表示違反の摘発等の職務について、これを補助するため、消費者食品表示監視員制度(仮称)を創設すべきである。



(7) 適格消費者団体による差止請求
食品表示違反に対して適格消費者団体による差止請求の制度を導入すべきである。
その際、制度の実効性を確保するために、適切な予算措置を講じるとともに、事業者が合理的根拠を示す資料を提出しない場合は表示違反があったものとみなす立証責任軽減規定を置くべきである。

 

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