知的障がいのある被疑者等に対する取調べの立会いの制度化に向けた意見書

 

2012年9月14日
日本弁護士連合会


 

本意見書について

日弁連では、「知的障がいのある被疑者等に対する取調べの立会いの制度化に向けた意見書」を2012年9月14日付けで取りまとめ、同年9月27日に法務大臣、厚生労働大臣、検事総長、警察庁長官に提出いたしました。

 

本意見書の趣旨

取調べの立会いを含む知的障がいのある被疑者等の取調べに関する制度の構築は、誤判防止、供述の信用性の担保の観点からのみならず、知的障がいのある被疑者等の適正手続を保障し、裁判を受ける権利の保障及び知的障がいのない被疑者等との平等の観点から導き出されるべきである。当連合会は、知的障がいのある被疑者等に対する取調べの立会いについて、次のとおり意見を述べる。

  1. 国は、直ちに、以下のことを柱とする知的障がいのある被疑者等に対する取調べの立会いの制度を構築すること。
    1. 立会人は、検察庁等捜査機関から独立した中立な立場の者であり、かつ、障がいの内容、程度あるいは特性を十分理解している者であることを原則とすること。例外として、当該被疑者等に発語障がいがある場合など、事情聴取等が困難な場合は、日頃から当該被疑者等と接している保護者や当該被疑者等の身近にいる支援者等その人の日常生活特性を理解している者を立会人とすること。
    2. 知的障がいのある被疑者等の取調べに入る前に、当該被疑者等の障がいについて、必ず専門家による十分なアセスメント を行い、取調官及び立会人において当該被疑者等の障がい特性や供述特性を把握した上で、これに配慮した取調べを行うこと。
    3. 全国各地に中立かつ障がい特性等を十分理解した立会人の担い手を確保するため、地域に根差した立会人ボランティアのネットワークを構築し、十分な研修を行い、適格な立会人の養成を行えるよう、人的・物的支援を行うこと。
  2. 1の制度が構築されるまでの間、暫定的に、知的障がいのある被疑者等の取調べの全てについて、日頃から当該被疑者等と接している保護者や当該被疑者等の身近にいる支援者等、その人の日常生活の特性を理解している者を立ち会わせること。
  3. 知的障がいのある被疑者等の取調べに関し、取調べの立会いのみを切り離して制度化するのでは不十分であり、次に掲げる2つの内容を当然に含むものとして構築されるべきものであること。
    1. 知的障がいのある被疑者等の取調べについて、立会いの有無にかかわらず、全過程を録音・録画すること。
    2. 知的障がいのある被疑者等の取調べを行う取調官に不可欠な、障がい特性や供述特性についての専門的な知識と経験を培うため、外部の専門家の意見や諸外国の例を参考にした権利擁護を担保する取調べ技法を早急に確立し、効果的な研修を行い、このような研修を受け権利擁護を担保する取調べ手法を習得した取調官により取調べがなされるようにすること。

 

(※本文はPDFファイルをご覧ください)