東日本大震災の復興における男女共同参画と被災女性の権利保障に関する意見書

2011年12月15日
日本弁護士連合会


意見書について

日弁連は、2011年12月15日付けで「東日本大震災の復興における男女共同参画と被災女性の権利保障に関する意見書」を取りまとめ、2011年12月20日付けで、文部科学大臣、厚生労働大臣、東日本大震災復興対策本部長、東日本大震災復興対策担当大臣、原発事故の収束及び再発防止担当大臣、内閣府特命担当大臣(防災担当)、内閣府特命担当大臣(男女共同参画)、内閣府特命担当大臣(経済財政政策)、岩手県知事、福島県知事、宮城県知事及び同3県の各市町村長(2011年東北地方太平洋沖地震にかかる災害救助法適用自治体)に提出しました。

 

意見書の趣旨

1 復興計画及び防災計画における女性の参画の拡大



(1) 復興計画及び防災計画の策定に当たる意思決定機関及びその実施組織に女性を原則として半数(やむを得ない理由により実現が困難である場合であっても最低30%の割合にて)参画させることを同計画の基本方針に盛り込み、実施すべきである。



(2) 復興計画及び防災計画は、男女の被災状況の差異の要因を分析し、また、女性・高齢者・子ども・外国人・障がいのある人・セクシュアルマイノリティ等の当事者・当事者団体からヒアリングを十分に行った上で策定すべきである。



(3) 男女共同参画の視点を踏まえた避難所ガイドラインを策定すべきである。



(4) 各自治体において、内閣府男女共同参画局の公表した関係機関への対応依頼に基づく被災者対応がなされたか否かについて検証し、今後、同様の通達等を実効性のあるものとするための方策を講じるべきである。



2 自治体の再建と雇用の支援



(1) 被災自治体の正規・臨時職員採用を男女同比率で促進し、そのために国が財政援助すべきである。



(2) 地域の復興に当たっては、被災地の医療施設、介護施設、保育施設の再建・拡充を優先して取り組むべきであり、そのために国が財政援助すべきである。そして、これを通じて、各家庭における家庭責任の負担を軽減するとともに、女性の雇用につなげるべきである。



(3) 女性を含む起業家向け支援として、無利息無担保貸付制度の創設、事務所家賃の援助、開業援助講座の開設、相談窓口の設置を行うべきである。



3 母子家庭に対する配慮



(1) 母子自立支援員の訪問支援及び母子家庭等就業・自立支援センターを活用し、母子家庭の就労支援・生活改善を強化すべきである。



(2) 東日本大震災による災害においては、児童扶養手当法12条2項の適用を凍結すべきである。



(3) 現在、内閣府においてモデル・プロジェクトが進められているパーソナル・サポート・サービスに関し、被災自治体については国が重点的に支援すべきである。



4 女性センターの拡充



(1) 被災地(沿岸部を含む)に配偶者暴力相談支援センターを拡充すべきである。(2) 医療、育児、介護、労働、法律等様々な問題を相談できる女性センターを被災地(沿岸部を含む)に設置し、その事業を充実させるべきである。



5 原発事故に対する対策



(1) 実効放射線量が1ミリシーベルト(自然放射線を除く)を超える地域を含む自治体に居住する全ての住民に対し、住民が選択・希望する場合は、除染等によりその地域の追加放射線量が1ミリシーベルトを下回るまでの間、国の責任によって、避難先の住宅を提供すること等により避難先における生活を保障し、避難に必要な費用を国が補償すべきである。



(2) 妊娠中の女性については、内部被ばくによる実効放射線量が1ミリシーベルト、腹部表面に受ける等価線量については2ミリシーベルトを超えることがないようにするよう、明確な法規制を行うべきである。また、18歳未満の子どもについても妊娠中の女性と同様の法規制を実施すべきである。さらに、国及び自治体は、この法規制を遵守できない状況に置かれる全ての妊婦と18歳未満の子ども、及びその家族に対しては最優先で避難の必要性と国の援助措置を周知し、国の費用負担により避難を実施させ、国の責任によって、避難先の住宅を提供すること等により避難先における生活を保障し、避難に必要な費用を国が補償すべきである。



(3) 実効放射線量が1ミリシーベルト(自然放射線を除く)を超える地域を含む自治体に居住する全ての住民に対し、継続的な内部被曝検査を実施するとともに、住民が継続的な健康診断を無料で受診できるような体制を国の費用により整備し、健康被害を防止すべきである。また、国、自治体は、上記地域における放射性物質による汚染の実態を正確・詳細に調査し、公表すべきである。



(4) 妊娠中、子育て中の女性の健康リスクに関して国が行っている誤った情報伝達を公的に撤回し、電離放射線障害防止規則等、従前からの法規制の根拠となっている放射線リスクに対する正しい見解を告知・情報開示すべきである。



(※本文はPDFファイルをご覧ください)