除染作業等に係る省令案に係る意見

2011年12月9日
日本弁護士連合会


意見書について

2011年12月5日、厚生労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課は「東日本大震災により生じた放射性物質により汚染された土壌等を除染するための業務等に係る電離放射線障害防止規則(仮称)の制定に係る意見募集」を行いました。


日弁連は、12月9日付けで、この意見募集に対し意見書を提出しました。

 

意見書の趣旨

1 適用対象

規制の対象を労働者の作業に限定することなく、労働安全衛生法の適用対象以外の主体の作業を含めるよう、他省庁(例えば、国土交通省や環境省)とも協議すべきである。



作業従事者には、労働者だけではなく小規模・零細な事業者やボランティアも考えられるので、作業環境の規制による作業者の生命・健康の保護の目的が潜脱されることのないようにされなければならない。



また、除染作業に携わる全ての者に対して、作業実施前に、必ず放射線及び放射線防護に関する知識並びに被ばくによるリスクの可能性等について十分な説明を行うことを義務付けるべきである。



2 被ばく線量限度



(1)被ばく線量測定の結果の記録



被ばく線量測定の結果の記録について、省令案では30年とされているが、永久保存とすべきである。


(2)被ばく線量の測定その他の対策の基準



ア 省令案は、除染特別地域等のうち、平均空間線量率が2.5μSv/hを超える地域での作業について、放射線測定器の装着、内部被ばく線量の測定、作業届の提出、保護具の装着を求めているが、被ばく線量による限定をせずにこれらの措置を採ること。



イ 仮に何らかの被ばく線量による限定をするとしても、省令案で定められている2.5μSv/h(8時間労働として20μSv/日、1か月23日労働として460μSv/月、5.5mSv/年)は高く、電離放射線障害防止規則で放射線管理区域とされる3か月当たり1.3mSvとすべきである。



ウ 空間線量率の測定は、全ての現場で作業中全ての時間において行うことが明記されるべきである。



3 汚染の防止



(1)洗身について



省令案では、「一定基準以上汚染されている場合」に洗身をするように定めているが、低線量被ばくの危険性も否定されないことから、予防原則の観点により、除染作業をした場合には必ず洗身させるべきである。



(2) 保護具について



省令案は、除染特別地域での除染作業をする場合に保護具を使用することを求めている。



この点につき、上記のとおり、低線量被ばくの危険性も否定されないことから、全ての作業において保護具を使用すること、しかも、マスクのようなものではなく、全身を防護する放射線防護服を着用することを明記すべきである。



(3)保護具の除染について



省令案では、「保護具が汚染されている場合、一定基準以下まで汚染を除去」することを求めているが、低線量被ばくの危険性も否定されないことから、予防原則の観点から、除染作業をした場合には必ず保護具を除染させるべきである。



4 健康管理



(1)特別健康診断について



省令案では、6か月に1回の特別健康診断の実施を求めているが、電離放射線障害防止規則では3か月ごとに被ばく線量を定めていることに鑑み、特別健康診断は3か月ごとに行われるべきである。



(2)記録の保存期間について


省令案では、健康診断個人票の保存期間を30年間とされているが、永久保存すべきである。

 

(※本文はPDFファイルをご覧ください)