東京電力福島第一、第二原子力発電所事故における避難区域外の避難者及び居住者に対する損害賠償に関する指針についての意見書

2011年11月24日
日本弁護士連合会


意見書について

日弁連は、2011年11月24日付けで「東京電力福島第一、第二原子力発電所事故における避難区域外の避難者及び居住者に対する損害賠償に関する指針についての意見書」を取りまとめ、文部科学大臣に提出いたしました。

 

意見書の趣旨

1 政府指示区域以外からの避難についても、合理性がある場合には救済対象とすることを指針に明記すべきである。その避難には、十分な情報がない中で東京電力福島第一原子力発電所からの大量の放射性物質の放出による被ばく等の危険を回避するためのもの(第一類型)と低線量の被ばくの危険を回避するためのもの(第二類型)があるとしても、両者は時期的に重なりある部分もあることを認めるべきであり、一期、二期という表現ではなく、類型という表現が適切である。



2 第一類型については、東京電力福島第一、第二原子力発電所事故後、大量の放射性物質放出の危険があったこと、情報が混乱していたこと、アメリカ合衆国政府が2011年(平成23年)3月17日に福島第一原子力発電所から80km圏内について避難勧告をしたこと(この避難勧告は同年10月6日まで継続された。)などを考えると、最低でも、福島第一原子力発電所から80km圏内となる部分がある市町村については、全ての者について、対象とすべきである。



3 第一類型における避難開始の終期としては、政府の認定でも、安定冷却・水素爆発の危険性が消失したとされるステップ1の達成後である、2011年(平成23年)7月末以降とすべきである。



4 第二類型については、低線量の被ばくの危険を回避するためのものである以上、対象地域を指定する際に考慮する要素として、放射線量を挙げるべきであり、第1に、少なくとも3月当たり1.3mSv(年間5.2mSv、毎時約0.6μSv)を超える放射線が検出された地域については、全ての者について対象とすべきであり、第2に、追加線量が年間1mSvを超える放射線量が検出されている地域についても、少なくとも子ども・妊婦とその家族については対象とすべきである。



5 いずれの類型においても、対象地域の指定に当たっては、コミュニティの分断や混乱を避けるために、原則として市町村単位とすべきであり、市町村の中に一部でも上記要素に該当する部分が存在する場合には対象とすべきである。



6 対象とされた市町村以外であっても、福島第一原子力発電所からの距離、放射線量、避難者の属性等から、個別に、避難に合理性が認められる場合には賠償されることを指針に明記すべきである。



7 損害賠償が認められるべき項目としては、避難者に対しては、生活費の増加分を含む、避難費用と精神的損害について認められるべきである。避難者の生活費の増加分については、全てが精神的損害と一括されるのではなく、避難に伴い、家族や地域社会が分断させられたために、一人当たり月1万円以上増加した携帯電話代や交通費等については、「高額の生活費の増加」として、精神的損害とは別に賠償されるべきである。



8 上記の第一類型及び第二類型の対象地域に居住する者についても、生活費の増加分及び精神的損害について賠償がされるべきである。



9 早急な除染実施の必要性は高いが、他方、除染によって、全ての問題が解決するわけではなく、相当長期にわたり、避難の必要が生じ、また、対象地域居住者の精神的・経済的負担が続くことを確認すべきである。



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