福島第一原子力発電所事故による被害者の健康管理調査の適正確保等を求める意見書

2011年11月15日
日本弁護士連合会


意見書について

日弁連は、2011年11月15日付けで「福島第一原子力発電所事故による被害者の健康管理調査の適正確保等を求める意見書」を取りまとめ、内閣総理大臣、厚生労働大臣、文部科学大臣、原発事故の収束及び再発防止担当大臣及び福島県知事に提出いたしました。。

 

要請書の趣旨

1 福島第一原子力発電所による被害者の健康管理調査については、福島県に委ねるのではなく、政府が責任を持って、福島県民のみならず、一定の放射線量が検出された福島県外の地域の住民及び事故当初その地域に居住し、その後全国各地に避難した住民も対象にして実施するとともに、住民がその後も継続して健康診断を無料で受診できる体制を整備すべきである。



2 健康管理調査は、プライバシーに十分に配慮しつつも、広く学術機関に開かれたものとすべきであり、文部科学省と厚生労働省は、平成23年5月16日付けで行った事務連絡「被災地で実施される調査・研究について」を速やかに撤回すべきである。また、県民健康管理調査の成果は広く医療、学術目的の研究に供するとともに、複数の機関による調査の機会を保障するべきである。



3 福島県は、県民健康管理調査を実施するに当たり、低線量被ばくの影響について否定的見解に立つ専門家を中心として検討委員会を設けているが、低線量被ばくによる健康被害を懸念する複数の専門家や市民代表、父母代表、マスコミ関係者なども参加させるとともに、その議事を広く国民にも公開し、真に県民に開かれた、公正な検討委員会に改組すべきである。 



4 福島県による県民健康管理調査については、以下のとおり改善した上で実施すべきである。


(1) 調査の目的を「県民の被ばく量の低減化」及び「疾病の未然防止」に変更すること。


(2) 可能な限り多くの対象者に対して対面調査による詳細な聴き取り調査を実施すること。


(3) 放射線被ばくの影響をがん・白血病のみに限定せず、所見は細大漏らさず把握するという姿勢で臨むこと。少なくとも血液検査、尿検査、ホールボディカウンター検査については希望者全員を対象に実施し、その場合の検出限界値は可能な限り低くすること。


(4) 甲状腺検査については、甲状腺超音波検査のみならず、併せて血液検査・尿検査を実施すること。


(5) 妊産婦に対しては母乳検査も実施するとともに、出生児についても追跡調査を実施すること。


(6) 適切な比較対照群を設定すること。


(7) 2011年(平成23年)7月11日までのみならず、それ以降の被ばく量の推定と健康状態の調査も継続して実施すること。食品による内部被ばくの可能性についても、本年4月1日以降も継続的に調査すること。



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