「事故調査機関の在り方に関する検討会取りまとめ」に対する意見書

2011年7月14日
日本弁護士連合会


本意見書について

当連合会は、2011年7月14日の理事会で「『事故調査機関の在り方に関する検討会取りまとめ』に対する意見書」をとりまとめ、同年7月20日に消費者庁長官、内閣府消費者委員会委員長等宛に提出いたしました。

 

 

本意見書の趣旨

消費者庁では、2010年3月に閣議決定された消費者基本計画に基づき、消費者事故等の独立した公正かつ網羅的な調査機関の在り方について検討が行われ、2011年5月に「事故調査機関の在り方に関する検討会取りまとめ」(以下「取りまとめ」という。)が報告された。


今後、2011年末までに関連法制度の検討及び2012年度予算措置が講じられ、2012年度から取りまとめの具体化が進められることとなっている。


当連合会では、2011年2月24日に「消費者事故等についての事故調査機関・制度の在り方に関する意見書」を消費者庁に提出し、同意見書の趣旨の実現を要望したところであるが、消費者事故等についての独立した公正かつ網羅的な調査機関の創設が消費者の安全・安心な生活を確保するうえで極めて重要かつ喫緊の課題であることに鑑み、取りまとめの具体化が迅速かつ適正になされるよう、以下のとおり提言する。



1 「取りまとめ」では、新たに設置されるべきとされる「消費者事故等調査機関」(仮称)の調査対象として「すき間事故」が挙げられ、そこに、ⅰ)事故の調査をする体制がない分野の事故、ⅱ)事故の調査をする体制はあるが、その目的や権限との関係では消費者保護の観点から十分な調査を進めることが困難な分野の事故、ⅲ)分野横断的であるために、消費者保護という統一的な観点で調査を進めることが困難な事故が含まれるとしているが、これらすき間事故の中でも、とりわけ製品事故、食品事故及び施設等事故(昇降機事故を含む。)については、早急に専門分野別の事故調査体制を整備すべきである。


2 「取りまとめ」では、消費者事故等の事故調査について、独立した公正な視点に立った評価とチェックを実施するための体制として「消費者事故等調査評価会議」(仮称)が整備されるべきとしているが、同機関が、既存の専門分野事故調査機関(運輸安全委員会等)及び新設される「消費者事故等調査機関」(仮称)のいずれの調査に対しても、真に独立して以下の機能を果たしうるよう、充実した体制と権限を整備すべきである。


(1) 必要な事故調査が実施されているかどうかの調査


(2) 必要な事故調査が実施されていない場合の実施要求


(3) 被害者・消費者団体からの相談・苦情を受け付け、調査の実施状況について関係機関から報告を受ける等して調査の実施状況を把握し、適切な調査が実施されていない場合には適切な調査の実施を要求する。


(4) 関連機関との調整、調査協力要請


3 「消費者事故等調査機関」(仮称)及び「消費者事故等調査評価会議」(仮称)の体制整備においては、事故調査機関に求められる「独立性」、「公正性」、「網羅性」、「専門性」がすべて充足されるよう、十分な人的・物的・財政的体制を確保するとともに、専門的知識・経験を有した専門家を配置し、既存の調査機関や民間の有識者や消費者団体・被害者支援団体との強い連携体制を構築すべきである。


4 消費者事故等に関して事故調査と刑事責任追及のための刑事手続が競合する場合においても、事故調査のために必要な事故現場の検証や事故関与者からの事情聴取等が刑事捜査との関係で不十分になることがないよう、特に以下の点に留意した調整と体制・環境・法制度の整備が行われるべきである。


(1) 事故現場の保存は、警察や検察等の捜査機関(以下「捜査機関」という。)と事故調査機関(以下「調査機関」という。)が協力して行い、それによって押収もしくは収集した客観的証拠(以下「物的証拠」という。)について、捜査機関と調査機関の間で相互利用ができるような体制を構築すること。


(2) 事故関与者が、その供述内容が刑事手続に利用されることをおそれて口述を躊躇することのないよう、調査機関による事故関与者への事情聴取の結果の刑事手続における利用制限のあり方等について、刑事訴訟法の改正等も視野に入れた環境整備を行うこと。


(※本文はPDFファイルをご覧ください)