福島第一原子力発電所事故による損害賠償の枠組みについての意見書

2011年6月17日
日本弁護士連合会


本意見書について

当連合会は、2011年6月20日、「福島第一原子力発電所事故による損害賠償の枠組みについての意見書」を内閣総理大臣及び経済産業大臣に対し提出しました。


意見書の概要

1 福島第一原子力発電所事故による損害賠償の枠組みについては、以下の3つの原則が確立されるべきである。


(1) 東京電力の現有資産による賠償がまずなされること。


(2) 不足する部分については国が上限を定めず援助する法律上の義務があること。 


(3) 原子力発電所災害を完全に防止するため、損害賠償についての枠組みは、持続可能なエネルギー供給・需要体制の構築と調和するものでなければならないこと。


2 上記原則に基づき、東京電力による賠償を実施するための国の援助策は、以下のようにすべきである。


(1) 東京電力による損害賠償に対する援助としては、現在計画されているような「資本注入・資金援助」ではなく、国が東京電力の送配電事業(関連知的財産権を含む。)の譲渡を受け、その対価として被災者への損害賠償債務を引き受けることによって行う。


また、東京電力が有する保養所等その他の資産を民間等に売却し、それによって生じた資金も損害賠償の原資とする。


(2) プルサーマル計画を中止し、再処理等積立金を損害賠償原資として活用する。


(3) 損害賠償額が(1)(2)を超えるときは、東京電力が継続して営む原子力発電以外のその他発電事業の収益及び国が買い取った「送配電事業」の収益をもって損害賠償の原資とする。


(4) 以上の過程を通じて、東京電力による資産散逸・資産の浪費を防ぎ、資産譲渡によって得られた原資を損害賠償債務の弁済に充てることを確保するため、東京電力の法的整理を検討するべきである。


(5) 送配電事業は、その公共性に配慮し、リスクに強い、分散型の、スマート・グリッドを整備すべきである。送配電事業については、損害賠償が終了するまで国又は公的機関が管理する。

 

(※本文はPDFファイルをご覧ください)