無期刑受刑者に対する仮釈放制度の改善を求める意見書

2010年12月17日
日本弁護士連合会


本意見書について

日弁連は、「無期刑受刑者に対する仮釈放制度の改善を求める意見書」をとりまとめ、法務大臣に提出しました。


本意見書の趣旨

近年、無期刑受刑者の数が著しく増加する中、無期刑受刑者の仮釈放件数は逆に減少の一途をたどり、無期刑の事実上の終身刑化が進行している。こうした中、安全な社会復帰が見込める状態となり、本来であれば仮釈放の対象となるべき受刑者までもが仮釈放とされず、ひいては刑事施設内で生涯を終える事態が生じている。


 したがって、無期刑受刑者に対する仮釈放の制度及び運用において、以下の措置がとられることを求める。


  1. 地方更生保護委員会の委員の構成を見直し、裁判官や弁護士、精神科医、心理学者、市民など、社会の多様な層を代表する人たちからなるものとしてその独立性を確保し、また定員を大幅に増員するべきこと。


  2. 無期刑受刑者に対する仮釈放審理の適正化を図るため、次の改革を行うこと。


    (1) 服役期間が10年を経過した無期刑受刑者に対しては、その期間が15年に達するまでの間に初回の仮釈放審理を開始し、その後は1~2年ごと、長くとも3年以内の間隔で定期的に仮釈放審理の機会を保障すること。
    (2) 受刑者本人及び代理人弁護士による仮釈放審理手続への参加を認めること。
    (3) 被害者等の意見聴取の位置づけとその方法を見直すこと。
    (4) 検察官からの意見聴取は、廃止すること。
    (5) 仮釈放を不許可とする判断は決定によるものとし、その旨の通知は理由とともに受刑者本人に対して書面により告知すべきものとし、仮釈放不許可決定に対する不服申立てを認めること。
    (6) 適切な仮釈放の機会を確保するため、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律を改正し、懲罰手続における手続的保障を確立すること。


  3. 帰住先・住居の確保、再就職など仮釈放後の環境調整と社会的支援を制度的に強化すること。


  4. 無期刑受刑者の仮釈放後の法的地位の安定を確保するため、仮釈放の取消事由を見直すこと。


  5. 無期刑受刑者にとどまらず、仮釈放要件を客観化し、かつ、規則ではなく刑法において具体的な基準を明らかにするよう、刑法第28条の改正を視野に入れた検討作業を開始すること。

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