法務局の地方移管に関する意見書

2010年9月17日
日本弁護士連合会


本意見書について

地域主権改革は、明治以来の中央集権体質から脱却し、この国の在り方を大きく転換する改革であり、この改革の柱に「国の出先機関の原則廃止」があります。



しかし、国の出先機関が行う事務には,その性質上、法の解釈・運用に至るまで全国一律に行う必要のある事務も存在しており、おしなべて一律に地方自治体に移管することが、必ずしも住民、国民の福祉に合致するとは限りません。現在国の各出先機関が行っている事務を、国民の権利擁護の必要性の観点から個別具体的に検討することが必要となります。



上記に照らしてみると、法務局の行っている事務の多くは、国民の権利義務に直接関係し、解釈・運用に至るまで全国一律に行う必要のあるものであり、国の出先機関であるからといって、軽々に法務局の全ての事務を地方自治体に委譲すべきではないことは明らかです。



そこで、日弁連は法務局の利用者の団体としての立場に基づき、2010年9月17日に意見を取りまとめ、法務省、内閣府等に提出しました。


本意見書の趣旨

  1. 法務局の所掌事務のうち、登記及び供託に関する事務並びに人権に関する事務は、国民の権利義務に直結するものであって、法の解釈・運用に至るまで全国一律に行われる必要性が高いので、これに関する権限を地方自治体に委譲することには賛成できない。
  2. 法務局の所掌事務のうち、国籍に関する事務には国家の基本政策に直接関わるものが含まれるので、これに関する権限を地方自治体に委譲することは不適切である。また、国の利害に関係のある争訟に関する事務は、国が直接の当事者であるから、これに関する権限を地方自治体に委譲することは同様に不適切である。
  3. 法務局のその他の所掌事務についても、事務毎に、全国一律処理の必要性や経済合理性(効率性)と地方自治体への権限委譲のメリットを具体的に比較考量して、慎重に検討すべきである。

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