集団的消費者被害救済制度に対する意見

2010年4月9日
日本弁護士連合会

 

本意見について

日弁連は、2010年4月9日付けで「集団的消費者被害救済制度に対する意見」を取りまとめ、2010年4月12日付けで消費者庁に提出しました。

 

本意見の趣旨

1.集団消費者被害を実効的に救済する訴訟制度として、個別の被害者からの訴え提起や訴訟委任・当事者選定といった積極的行為が無くとも、適格消費者団体を訴訟追行主体とし、一定の範囲の被害者全員を当事者として、その損害に対する金銭賠償を集団的に審理して救済の対象としうる新たな被害救済訴訟制度(いわゆるオプト・アウト方式を基礎とする集合訴訟制度)の導入が必要であり、今後、以下の点に特に留意して、検討を進めるべきである。
(1)救済の対象とすべき請求権は、現行消費者団体訴訟制度の対象となる事実に基づく損害賠償請求権にとどまらず、取引・表示・安全に関する消費者被害に関する不法行為損害賠償請求権、無効な契約条項に起因する不当利得返還請求権、消費者被害にかかる契約に関する債務不履行損害賠償請求権等を広く含むものとすること。
(2)対象となる権利が同一又は同種の事実上及び法律上の原因に基づいており、損害額の主張・立証が類型的である、事業者保有の客観的資料等によって損害額が容易に立証できる、等の事情があり、対象消費者による個別の主張・立証がなくとも集団訴訟を適切に審理できることを要件とすること。
(3)対象消費者の手続除外権を確保するため、国庫負担による通知・公告を行うものとすること。
(4)訴え提起時に請求金額の確定を要しないとすることのほか、損害額等認定に必要な資料が適切に提出されるための制度及び損害額の柔軟な認定のための制度を設けること。
(5)管轄、訴額の算定、時効の中断、和解、行政による情報の提供、保全処分等について、訴訟手続上の特則や特別の措置を設けること。

 

2.1.に加えて、集団消費者被害の実効的救済と抑止を図る観点から、一般の民事保全及び破産制度等とは別の、以下のような内容の新たな制度の導入の可否を検討すべきであり、そのための諸調査や論点整理も行うべきである。
(1)事業全体として消費者から違法・不当に金銭その他財産を収奪することを目的としていると評価できる悪質商法被害事案において、加害事業者の財産隠匿や財産散逸等により、被害者の現実の被害回復がはかれないという事態を避けるべく、これら事業者の財産を早期にかつ包括的に保全する仕組み。
(2)このような悪質商法被害事案において、加害事業者の財産が、少なくとも違法・不当な事業者の収益ないしそのような事業活動により形成された財産の限度で、被害者の被害回復に優先的に充てられるようにする仕組み。
(3)このような悪質商法被害事案や、不当表示事案など事業者の違法行為により個別の消費者の損害との結びつきを明らかにすることが困難な事案等において、消費者被害を起こすような事業活動の継続阻止と再発抑止のため、事業者の違法・不当な収益ないしそのような事業活動により形成された財産を、適切な手続で剥奪する仕組み。

 

3.1.及び2.の制度を実効的に運用するため、行政庁の調査権限及び調査によって得られた情報の利用に関する規律の整備、適格消費者団体の人的・財政的基盤を確立するための方策、導入される諸制度を行政庁あるいは民間で担っていく法律専門家の確保等の諸制度基盤整備もあわせて進めるべきである。

 

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