気候変動/地球温暖化対策法(仮称)の制定及び基本的内容についての提言

2009年5月8日
日本弁護士連合会


本提言について

地球温暖化は、国際社会が緊急に取り組むべき重点課題であり、その対策の目標は、産業革命前からの平均気温上昇を2℃以下に迎え、気候を安定化させることにあります。
日本は京都議定書において90年比6%削減を約束していますが、その後も温室効果ガスの排出量が増加し、2007年には90年比9.0%増加の状況にあり、有効な排出削減対策が講じられてきたとはいえません。


日弁連は、2006年11月22日、「地球温暖化防止対策の強化に向けて」と題する意見書を公表し、地球温暖化防止対策に盛り込むべき20項目の事項を提言してきましたが、その後示された新たな科学知見(IPCC第4次報告書公表等)や、海外における新規立法の動き(英国での気候変動法の成立等)に基づき、2009年5月8日に改めて本提言を取り纏め、2009年5月15日に、内閣府、地球温暖化問題に関する懇談会、経済産業省、環境省、各政党等に提出しました。


提言の趣旨

  1. 法律の制定の必要性と中長期の削減目標
    日本は、国際社会と協調して、中長期的に大幅な温室効果ガス排出削減を確実に実施し、低炭素社会への移行を実現する必要がある。科学の要請するところによる削減目標を設定し、その目標達成のための実効性ある政策の導入を法的に担保する基本法の制定が必要である。具体的には、2050年までの削減目標を、科学の要請に基づき、(1)2020年までに1990年比で30%削減、(2)2050年までに1990年比で80%削減とし、両削減目標をグラフ上で直線で結んだ数値を毎年の排出削減目標として定め、科学的知見の進展の中で、見直しや強化を行うべきである。


  2. エネルギー政策や経済的仕組み
    中長期の削減目標の達成のために、再生可能エネルギーの導入目標を定め、固定価格買取制度を導入し、再生可能エネルギーの飛躍的拡大を図る。CO2排出の93%以上が化石燃料の燃焼に起因するため、化石燃料の利用は抑制し、原子力発電についても、持続可能な社会の実現に沿わないものであることから、原子力発電所の新増設は停止し、既存の原子力発電所については段階的に廃止すべきである。また、排出上限枠を設定して排出枠の取引を認める国内排出量取引や環境税(炭素税)など経済的措置を導入する。


  3. 気候変動/エネルギー省の設置
    気候変動/エネルギー省を設置することにより、エネルギー政策と地球温暖化対策及び低炭素社会の実現に向けた政策を統合的に打ち立てることができる組織体制を構築する。


  4. その他
    (1)情報公開を徹底し、気候変動対策に関する政策決定及び実施に、市民を含むすべてのセクターが参加できることを制度的に保障する。
    (2)地球温暖化対策推進法21条の2以下の温室効果ガス算定排出量報告公表制度を抜本的に強化し、秘密規定を廃止する。
    (3)国際交渉において、地球温暖化の影響に脆弱な途上国への適応資金や技術の供与問題が重要課題の1つとなっており、政府が適応計画を策定し、その計画について国会の承認を得る規定を設ける。
    (4)目標の見直しや対策の是正・強化等について政府に勧告する権限と独立した気候変動委員会(仮称)を設置する。
    (5)国及び地方公共団体における気候保護のための政策立案及び対策の実施に関して、市民・NGOが実質的に参加できる仕組みを制度化し、その実効性を確保する。
    (6)地域においても、産業を活性化し生活を安定化させることと、省エネの促進、再生可能エネルギーの普及、温室効果ガスの排出削減を両立させることが不可欠であり、そのためには関連施策の実施及び規制に関する国と地方公共団体の権限の見直し、特に地方公共団体の権限強化が必要である。
    (7)国際合意形成に積極的に参加し、途上国に対する排出削減の技術的財政的支援等を通して、低炭素社会実現への国際的貢献をはかる。

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