公文書管理法案の修正と情報公開法の改正を求める意見書

2009年4月24日
日本弁護士連合会


本意見書について

政府は、公文書管理の在り方に関する有識者会議の最終報告(「『時を貫く記録としての公文書管理の在り方』~今、国家事業として取り組む」)をふまえて、2009年3月、公文書等の管理に関する法律案が第171回国会に上程しました。


日弁連は、その法律案について検討を行い公文書管理法案の修正と情報公開法の改正を求める意見を,4月24日に取りまとめました。


同意見書は、2009年4月30日付けで各政党に提出しました。


意見の趣旨

  1. 日弁連は、2008年10月22日付「公文書管理法の早期制定と情報公開法の改正を求める意見書」(以下「2008年10月意見書」という。)で述べたとおり、政府部内に、公文書管理担当機関として「公文書管理庁」を設け、文書の作成、保存、移管・廃棄という文書のライフサイクルを通じた管理を適切に行わせるとともに、行政機関本体から距離を置き、立法府、司法府からの文書をも含めその移管を適正・円滑に受ける「特別の法人」としての国立公文書館であることを法制化すべきであると考えるが、特に、今回上程された公文書管理法案を可決成立させるのであれば、公文書管理法案は、以下の各点において、修正のうえ、制定されるべきである。


    (1) 目的規定(第1条)に、「国民の知る権利の保障」を明記すべきである。


    (2) 本法案4条において意見決定過程文書の作成義務を明記するとともに、本法案5条1項において行政文書ファイルの保存期間を最長30年としたうえで、5条4項において保存期間及び保存期間の満了する日を、5年間延長することができるとして保存延長期間を明示するなど、本法案の政令委任事項及び規則委任事項(特に5条5項の歴史公文書該当性判断)についての具体的内容を明らかにし、その内容をできる限り、法律事項として、本法案に盛り込むべきである。特に、公文書は公共財であり、行政文書フォルダに残された個人的メモも含め国民の財産であること及び文書の作成・保存・廃棄・移管・公文書館での保管という文書のライフサイクル全体で公文書管理を捉えることを明記し、いかなる文書を後世に残すか、若しくはいかなる文書が行政監視につながるかという観点から作成すべき行政文書等の範囲を決めるべきことである。


    (3) 中間書庫についての規定を付加して、その法的根拠を明確にし、これによる行政文書及び国の機関の文書の保存を充実させるべきである。


    (4) 管理状況の報告にあたっては廃棄予定文書を全件、内閣総理大臣に事前報告させ、この公表をふまえて、国民が意見を述べる機会を付与し、その手続を経て、最終的には内閣総理大臣の承認を得なければ廃棄できないことにすべきである。


    (5) 国会や裁判所の公文書についても、行政文書と同様の管理ができるよう、国会や裁判所の公文書管理法を、この法律の制定後1年以内に別途制定することを義務付けるべきである。


    (6) 特定歴史公文書等の利用請求については、利用拒否事由をさらに限定し、かつ「時の経過」による利用拒否事由の不該当推定規定を設けることにより「30年原則」を採用し、利用しやすい制度にすべきである。


    (7) 本法案附則第7条は削除し、刑事確定訴訟記録や軍法会議記録についても、他の行政文書と同様に、本法案における行政文書として、国立公文書館に移管されるようにすべきである。


    (8) 著作権法上の公表権、公衆送信権などとの関係を整理したうえでの著作権法改正をすみやかに行うべきである。


    (9) 何人も公文書管理委員会に対し公文書の管理についての意見が述べられるようにするとともに、公文書管理委員会において公文書管理の制度改善のための建議機能を付与すべきである。


    (10)公文書管理担当の国務大臣を常置し、さらに内閣府に公文書管理推進会議を設けるべきである。


    (11)地方公共団体が、公文書管理法の趣旨にのっとり、その保有する文書の適正な管理に関して必要な施策を策定し、これを実施するためには、公文書館法附則2項を撤廃して「歴史資料として重要な公文書等について調査研究を行う専門職員を置くこと」を、同法4条2項のとおり義務付け、また公立図書館と公文書館との併館を認めるなどの措置が認められるようにすべきである。


    (12)本法案附則に、電子文書による原本取扱いとする、公文書管理の抜本的改革を進めることを明記すべきである。


  2. 情報公開法の改正については、当連合会の2008年10月意見書及び2009年1月23日付「情報公開訴訟におけるインカメラ審理の法制化を求める会長声明」 をふまえた法改正がなされるべきである。

(※本文はPDFファイルをご覧下さい)