非拘禁者に対する刑事補償制度を求める意見書

2009年3月18日
日本弁護士連合会


本意見書について

日弁連は、2009年3月18日理事会にて、非拘禁者に対する刑事補償制度を求める意見書をとりまとめ、同月31日に法務大臣宛に提出いたしました。


意見の趣旨

無罪の裁判が確定した場合、国は被告人であった者に対し、以下の内容の非拘禁者に対する刑事補償制度を設けるべきである。


  1. 刑事訴訟法による通常手続又は再審若しくは非常上告の手続において無罪の裁判を受け、同裁判が確定した者は、抑留又は拘禁を受けなかった場合についても、国に対して補償を請求することが出来るものとする。
  2. 通常手続により無罪の裁判が言い渡され、同裁判が確定した場合は、起訴された日より無罪判決が確定した日までの期間のうち抑留又は拘禁を受けなかった日数に応じて一日五百円以上六千二百五十円以下の割合による補償金を交付する。
  3. 再審又は非常上告手続によって無罪の裁判が言い渡され、同裁判が確定した場合は、起訴された日より原判決が確定した日までの期間及び当該手続の要求がなされてから無罪の判決が確定するまでの期間のうち、抑留又は拘禁を受けなった日数に応じて、一日五百円以上六千二百五十円以下の割合による額の補償金を交付する。


意見の理由

現行刑事補償法では、無罪の裁判を受けた人が刑事訴訟法等によって未決の抑留又は拘禁を受けた場合には、国に対して抑留又は拘禁による補償を請求することができるとされていますが、非拘束期間中について補償する規定はありません。したがって、現行法上は、刑事訴追を受けて無罪の裁判が確定した場合であっても、身体拘束を受けなかった人や身体拘束を受けなかった期間については何らの補償もされていません。


しかし、国家から訴追を受けた人は、それが身体拘束を伴うと否とに関わらず、様々な有形無形の圧迫や制約を受け、憲法上の権利である生命、自由及び幸福追求に対する権利など基本的人権に対する重大な侵害を受けます。国家の権力行使としての訴追権を行使する以上、国家は冤罪被害者に対して担当した公務員の故意・過失の有無を問わず、また身体拘束の有無に関わらず、その補償をするべきです。


近年、改めてかかる制度創設に向けた検討がすすめられるようになり、刑事補償制度の拡充を求める社会的必要性はますます高くなっています。


よって、無罪判決が確定した被告人の非拘束期間中の不利益をも補償するため、刑事補償法を改正することを求めます。


(※本文はPDFファイルをご覧下さい)