新たな在留管理制度の構築及び外国人台帳制度の整備に対する意見書

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2009年2月19日
日本弁護士連合会


本意見書について

現在、政府は、法務省において、2009年通常国会に関係法案を提出することを前提として、法務大臣が日本に在留する外国人の在留管理に必要な情報を一元的かつ継続的に把握する新たな在留管理制度の構築に向けた具体的な検討を行っています。他方、政府は、これに対応し、総務省及び法務省において、市区町村における外国人台帳制度の整備の検討を行っています。


日弁連では、これらの制度に対し、外国人の基本的人権の保障、多民族・多文化の共生する社会の実現、現代社会における自己情報コントロール権の保障等の観点から、2009年2月19日の理事会で意見書を取りまとめ、同年同月24日に内閣総理大臣・総務大臣・法務大臣などに提出しました。


意見の概要

1 新たな在留管理制度の構築に対する意見

(1) 新たな在留管理制度については、管理を強化する必要性を裏付ける事実の有無や必要最小限の管理であるかなどの視点から、その採否自体を含め、慎重かつ厳格な検討をあらためて行うべきである。


(2) また、その具体的内容については、次のような問題点がある。

ア 外国人からの在留状況の届出については、在留資格の更新等の判断に具体的な必要性のない事項についてまで対象とすべきではない。

イ 全ての中長期滞在の外国人(特別永住者を除く。)にICチップの組み込まれた在留カード(仮称)を交付し、罰則をもって携帯を義務付けることに反対する。

ウ 特別永住者に現行の外国人登録証明書と同様の証明書を交付するとしても、その常時携帯を義務付けるものであってはならない。

エ 外国人の留・就学先等の教育機関に対し、所属する外国人の情報を法務大臣に提供することを義務付けることに反対する。

オ 行政機関による情報の相互照会・提供においては、個別具体的な必要性及び客観的な合理性を要件として、個別の照会・提供の方法によるべきであるが、まずもって、独立した監督機関の設置を先行すべきである。

カ 法務大臣による新たな情報利用の仕組として、新たに在留資格の取消事由の対象を拡大する制度を設けるべきではない。


2 外国人台帳制度の整備に対する意見

(1) 市区町村に外国人台帳を整備すること自体には賛成であるが、市区町村による住民行政の実現の観点から、すべての外国人住民の基本的人権を等しく保障するものとなるようあらためて構想されるべきである。


(2) また、その具体的内容については、次のとおりとすべきである。

ア 難民の可能性がある一時庇護上陸許可者・仮滞在許可者や、適法な在留資格を有しない外国人についても、その必要に応じ、市区町村が外国人台帳制度の対象とすることを許容するものとすべきである。他方、国や自治体は、外国人台帳に掲載されていない外国人であるからといって、そのことを理由に行政サービスの給付を拒否すべきではない。

イ 外国人台帳制度における情報は、あくまで外国人住民に対する行政サービスの目的のために利用されるべきであり、外国人の在留管理等の目的のために利用すべきではない。


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