非司法競売手続に関する追加意見書

2008年3月19日
日本弁護士連合会


 

本意見書について

現在導入が検討されている非司法競売手続について、日本弁護士連合会は、2007年11月22日付けで「非司法競売手続に関する意見書」を発表いたしました。
その後、本テーマについて更なる検討を加えた上で、改めて強く反対する旨の意見をより詳しく述べるため、新たに「非司法競売手続に関する追加意見書」を取りまとめました。
意見の趣旨は以下の通りです。


1.非司法競売手続を導入する立法事実がない。
不動産競売事件の約4分の3は申立てから半年以内で売却実施処分に付されており、また、売却率は全国では81%を超え、東京地裁及び大阪地裁では100%に極めて近い数字となっているほか、未済事件数は年々減少の一途を辿り、2007年では1998年の3分の1にまで減少している。


2.三点セットと競売価格下限規制の必要性
不動産が不当に廉価で売却されることはなく、安心して多くの買受人が入札に参加できることから、より高値での入札がなされることにより、安価で売却されることによる債務者・保証人の不測の被害を防止している。
買受人は、落札の際、三点セットの記載をもとに、物件の権利関係や占有権原の有無、法定地上権の成立、賃借権の承継などの権利関係を把握し、買受後のリスクを検討できる。担保物件が物件の価値に見合う適正価格による売却と配当がなされることによって不動産担保が制度として機能している。


3.民事執行法の改正と運用の改善の歴史は、より開かれた競売をめざし、執行妨害を排除し、より迅速に、より多くの買受希望者が安心して入札ができ、公正な価格競争ができ、より高値で売却できることを一貫して目指して来た流れである。


4.競売制度研究会で検討されているA、B、C、Dの非司法競売手続については、いずれも問題点があり、賛同できない。


5.特にD案については、弊害が大きく、次のような問題点がある。
 (1) 貸付時における債権者と債務者間の実行方法の合意に自由はない
 (2) 貸付け段階で将来の実行方法を決めることには無理がある
 (3) 全ての利害関係者を調整する制度になっていない
 (4) 短期に安値で担保物件が売却されると、破綻債務者の再生の機会を奪う
 (5) 不足分請求の禁止、権原保険による補償などの制度がある米国とは背景事情が違う
 (6)内閣府のアンケートは、不適切な方法で行われており何の根拠足り得ない

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