保険業法の改正に関する意見書

2008年2月14日
日本弁護士連合会


本意見書について

現在法務省において保険法の現代化を行う保険法案の検討が進められており、2008年通常国会に同法案が提出される予定です。これに伴い、金融庁では、保険法制定に伴う保険業法の整備を検討しています。


他方、2007年9月改正保険業法を含む金融商品取引法制が施行され、投資性のある保険商品に金融商品取引法が一部準用されることになりましたが、金融商品取引法制については、さらに保険・銀行・商品デリバティブも統合した金融商品ないし投資商品に関する横断的規制法である金融サービス法が展望されています。


保険は国民生活の安定と国民経済の健全な発展を支えるものであり、国民の生活や経済活動をめぐる危険が多様化し、また、高齢化社会の進行や公的保障制度の見直しが議論される現代において、その重要性は増しています。ところが、保険商品に関する規制緩和が進められる中、保険金の不払い問題をはじめとして、保険をめぐるトラブルや紛争は後を絶ちません。


そこで、日弁連は、保険業法第1条が掲げる「保険契約者等の保護」のよりいっそうの充実を図る観点から、保険業法の改正について、標記の意見書を2008年2月14日付で取りまとめ、同月21日に渡辺喜美内閣府特命担当大臣宛てに提出いたしました。


意見の要旨はつぎのとおりです。



  1. 保険約款について、現在の保険業法上の認可規制及び消費者契約法による規律に加えて、保険約款の一般的規制を行う規律を設けるとともに、責任開始前発病不担保条項に関する規制を設けるべきである。
  2. 保険の募集について、一般の保険にも金融商品取引法の規定を準用するとともに、説明義務の内容について明確化し、説明義務違反の効果として保険金相当額を損害と推定する規定を設けるべきである。
  3. 保険契約における被保険者の同意について、モラルハザード防止の観点から、同意を取ることが不可能若しくは困難である場合を除き同意を必要とすべきである。
    未成年者を被保険者とする死亡保険について、未成年者保護の観点から、葬祭費を超える金額を保険金額とする場合には、特別代理人の選任(なお、民法826条)などの慎重な手続きを検討すべきである。
  4. 保険金不払いや支払いの遅延等の問題等を引き起こさないため、保険金の支払い請求の際に、保険者に、保険金支払い事由に関する情報提供義務を課すとともに、誠実かつ迅速に必要な調査を行うべき義務を定めるべきである。
  5. 解約返戻金等について、保険約款に計算方法に関する明確かつ一般の契約者に理解可能な定めを求めるとともに、計算根拠に関する情報開示義務を定めるべきである。また、解約返戻金計算のための解約控除は、解約についての清算金は含まれないことを明確に定めるべきである。
  6. 中小企業・団体を保護する観点から、中小企業・団体に保険法の片面的強行法規としての適用がされない場合には、保険業法において適切な説明義務を課すべきである。

以上


(※本文はPDFファイルをご覧下さい)