司法試験の在り方についての意見

2008年1月8日
日本弁護士連合会


 

本意見書について

2007年の新司法試験について、公法系・行政法担当の考査委員であった法科大学院教授が、答案練習会の実施等の方法によって受験指導をしたことなどの事実が明らかとなり、新司法試験の公正さへの信頼が大きく揺らぐ出来事がありました。これに対し、法務省は,同年6月29日、同教授を解任する等の措置をとるとともに、同年9月13日、司法試験委員会は、今般の不適切な行為に関する再発防止策を打ち出しました。


この措置については、新司法試験の公正さへの信頼を回復するために緊急的措置としてやむを得ない部分もあるものの、法科大学院教育を中核とした法曹養成制度において、形成途上の法科大学院教育にふさわしい司法試験の内容を確保するためには、多くの法科大学院教員が司法試験の問題作成に関与することの意義を無視することはできません。そこで、司法試験考査委員のあり方ついて、以下のとおりの意見書をまとめました。


  1. 司法試験の公正さに対する信頼を確保するため,再発防止策として、以下のような措置がとられるべきである。
    (1)考査委員はその任期中卒業生や翌年卒業予定の学生の指導を担当しないこととする等、司法試験の公正さに疑念を生じさせない方策を具体的に明示したガイドラインを制定・公表し,その適正な運用にあたっては、問題となった事案について徹底した事実調査及びその公表、当該考査委員や関与者に対する厳正な処分がなされるようにすること。
    (2)考査委員の選任に関し、たとえば任期の更新を3年以内とするなどの運用を通じて、全国のできるだけ多くの法科大学院から選任するよう配慮すること。


  2. 2007年9月13日付「再発防止策に関する司法試験委員会決定について」は,実務と理論の架橋をめざす法科大学院教育と司法試験との有機的な連携をそこなわないよう運用し、随時その運用状況を検証し、可及的速やかに必要な見直しを行うべきである。


  3. 学生が安直な試験対策に傾斜しないように、法科大学院に求められる教育内容にふさわしい出題内容の在り方、出題趣旨、採点基準その他の情報開示の具体的な在り方等について、十分な検討をすべきである。

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