最高裁第2回「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」に対する意見書

2007年9月13日
日本弁護士連合会


 

本意見書について

最高裁判所は、2007年7月14日付けで「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」を公表しました。それに対し、同年9月13日付けで、最高裁第2回「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」に対する意見書を取りまとめ、最高裁判所等に提出しました。

本意見書の趣旨

平成17年7月15日最高裁判所が公表した「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」(以下「第1回報告書」という。)に対する平成17年10月18日付当連合会意見書(以下「第1回意見書」という。)において、当連合会は、第1回報告書に基づく検証結果につき、最高裁が裁判の迅速化に関わる基礎データを分析し、その結果を広く国民に示したこと、また、最高裁判所が、裁判の迅速化に関する法律(以下「迅速化法」という。)を基盤整備法として位置づけたことについては、これを評価した。そのうえで、裁判の迅速化を検証するに当たっては、審理期間という側面のみが強調されるあまり、裁判の適正や充実がおろそかになることのないよう配慮すべきであることを指摘した。さらに、以後の課題として裁判の適正、充実の観点及び司法制度及び人的・物的体制の基盤整備の観点からの検証を行うべきことを指摘するとともに、事案に応じ期間の長短がありうるという実態を踏まえて以後の検証を行うべきことを趣旨とする意見を公表したところである。


最高裁第2回「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」(以下「第2回報告書」という。)では、第1回目の報告に引き続いて裁判の迅速化に関わる新たなデータが具体的かつ客観的に検証されており、その点は評価すべきものである。
 特に、第2回報告書においては、民事・刑事事件の審理期間に影響を及ぼす要因分析や事件類型別に審理期間に影響を及ぼす要因とその背景事情が多角的に考察されており、より実証的なものとなっている。


また、第2回報告書は民事事件における人証調べに要する期間の比重が下がっているのに対し、争点整理に要する期間が長期に及んでいると指摘している。こうした実情を踏まえ、第2回報告書は、今後争点整理期間と審理期間との関係についての検証をすべきことを提案しており、今後の課題として、争点整理期間における訴訟代理人の事件への関与のあり方、依頼者との関係、争点整理の期日間の準備状況等の実情とそれが審理期間に及ぼす影響等を検証することが必要だとしている。


しかしながら、裁判の迅速化の検証においては、単に審理期間だけの問題ではなく、適正かつ充実した審理を実現すべきこと及びそのための制度及び人的・物的基盤を整備することこそが重要である。争点整理のためには相当の期間を必要とするのであり、民事訴訟が十全に機能しているかという観点から検証されるべきである。

 

 

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