教育関係3法「改正」法案に関する意見書

→英語(English)

2007年6月14日
日本弁護士連合会


 

本意見書について

現在、国会で審議中の、学校教育法、地方教育行政組織法、教育職員免許法などの改正のための教育関係3法案について、日弁連は2007年6月14日、意見書を取りまとめました。


日弁連が教育基本法の改正に際して表明した2006年9月15日意見書(→教育基本法改正法案についての意見)及び2006年12月20日会長談話(→改正教育基本法の成立についての会長談話)に照らし、憲法の教育条項(13条、23条、26条など)を踏まえ、国家に対する権力拘束的な規範としての教育基本法の立憲主義的性格に鑑みて、次のような問題があり、慎重な議論が必要です。これらの問題を解消しないままでの法案の成立には反対です。


1.国家に対する権力拘束規範としての憲法及び教育基本法の立憲主義的性格から、教育内容に対する国家的介入についてはできる限り抑制的であることが求められますが、これに抵触して教育内容統制を図るもので、思想信条の自由、教育を受ける権利・学習権を侵害するおそれがあるという問題があります。
  1. 学校教育法改正法案21条の「義務教育目標」規定には、「我が国と郷土を愛する態度」のように、その内容が多義的なものが含まれています。
  2. この「義務教育目標」規定は、本来多義的な概念を、国や地方公共団体が一義的に決することになりかねず、教育基本法の改正に関する審議で変更はないと政府答弁された、旭川学力テスト事件最高裁大法廷判決(1976年5月21日)の基準に照らして、教育の政治的中立性・不偏不党性、自主性・自律性、公正・適正を害するばかりでなく、子どもや保護者の思想信条の自由を侵害することが危惧されます。
  3. 文部科学大臣に教育課程(学習指導要領など)の内容を具体的に定める権限を付与し(同法案33条)、また、文部科学大臣が定める基準で一律に、学校に、自己評価・改善措置・教育水準向上義務(同42条)と情報提供義務(同43条)を課すことも、国の教育内容統制を可能にする制度としてはたらくことが危惧されます。

2.地方教育行政組織法の改正案による、国、都道府県教育委員会による市区町村教育委員会(案48条、49条、50条)と私立学校(同27条の2)への監督・統制強化は教育の地方自治原則を崩し、私立学校の自主性を阻害するおそれがあるという問題があります。
  1. 「未履修」問題や「いじめ自殺」問題は、立法の理由たり得ません。特に「いじめ自殺」問題は、国の地方教育行政への介入強化によって解決される問題ではありません。
  2. 学習指導要領の「日の丸」・「君が代」条項の取り扱いについて「是正」要求の対象とされれば、教育への「不当な支配」を制度化することになりかねません。
  3. 都道府県知事が、私立学校の「学校教育に関する専門的事項」について、都道府県教育委員会の助言・援助を得ながら実質的な介入をなしうる権限を付与するのは、私立学校の独自性、自主性・自律性を制約することになりかねません。

3.免許更新制による教員への統制強化により、教員の自主性・自律性に萎縮効果をもたらし、子どもの学習権の充足の要請に応えられない事態を招くという問題があります。

教育職員免許法改正案の免許更新制度、教育公務員特例法改正案の「指導改善研修」制度は、教員に任命権者や免許管理者の意向を忖度する身分安定指向や、教育の本質的要請である自主性・自律性に萎縮効果をもたらし、子どもの学習権に資する教育の担い手の確保に繋がらず、憲法の定める子どもの学習権に対応して充足を図るべき立場にある国の責務に違背する形で、国の教育内容統制を進行させることになるおそれがあります。


(※本文はPDFファイルをご覧下さい)