「金融商品取引法制に関する政令案・内閣府令案」に関する意見募集に対する意見

2007年5月11日
日本弁護士連合会


本意見書について

金融庁は、「金融商品取引法制に関する政令案・内閣府令案」を公表しました。


「金融商品取引法制」は、2006年6月の証券取引法等の改正によるもので、証券取引法を「金融商品取引法」に改正し、金融商品に関する「規制の隙間」を埋めるとともに、販売・勧誘ルール等業者の行為規制を整備しました。あわせて、銀行法・保険業法・信託業法等を改正し、投資性の強い預金・保険・信託等に対して「金融商品取引法」を準用することとしたものです。今回の政令案は・内閣府令案はこのような「金融商品取引法制」の規律の内容を具体化するものです。


本意見は、今回の意見募集にあたって、日弁連のこれまでの意見に基づき、「金融商品取引法制」をより消費者保護の実効あるものとする観点から、意見を述べるものです。


主な意見の概要はつぎのとおりです。


1. 金融取引業者の販売・勧誘規制等について

  • 業者による不招請勧誘は、投資被害の温床である。政府案は、不招請勧誘の禁止の対象を、「店頭金融先物取引」のみとしているが、「元本欠損のおそれのある取引」一般を禁止の対象とすべきであり、少なくとも、現行法と同様に「店頭金融先物取引」とともに「取引所金融先物取引」も禁止の対象とすべきである。
  • 消費者保護及び市場の価格形成機能確保のために、顧客に対する適切な説明ないし情報提供は不可欠である。政府案が、書面交付の際に適切な説明を行わないこと、及び、誤解を生じさせる表示をしないことを禁止事項とする旨の定めていることに賛成する。また、広告規制、契約締結前交付書面の定めにも基本的に賛成する。但し、その一部を修正すべきである。
  • 金融商品取引法は、投資家保護規制が適用されるアマ(一般投資家)と緩やかな規制しか適用されないプロ(特定投資家)を分け、アマである個人も一定の要件のもとでプロに移行できるとしているが、その要件は厳格にすべきである。(政府案は、財産的要件の基準を3億円としているが、10億円とすべきである。)

2. 集団投資スキームに関する規律について

  • 金融商品取引業者の登録要件は相応の水準である必要があるが、第二種金融商品取引業者の最低資本金1000万円という要件は低額にすぎ、少なくとも3000万円とすべきである。
  • 集団投資スキームを含め金融商品に横断的規制が行われたが、規制の適用除外となる範囲や規制の対象とならない範囲が広い場合には、横断的規制を導入した意義が没却される。この観点から、業者登録が不要となり行為規制も大部分が適用されない「適格機関投資家等特例業務」の要件は厳格にすべきである。(一般投資家への販売・勧誘等を許容する定めは、特定投資家の役員やその親族にのみ販売・勧誘等を許容する定めに改めるべきである。)
  • 前項と同様の観点から、「500名」未満が当該金融商品を所有することになる販売・勧誘には開示規制を適用しない旨の定めを改め、開示規制が適用されない範囲を限定し、「50名」未満が当該金融商品を所有することになる販売・勧誘の場合とすべきである。
  • 投資被害の多くの事例で業者が分別管理を行っていない実態が存することに鑑み、分別管理に関する規律は、少なくとも提案の規律が維持されるべきである。

3. 損失補てんの適用除外事項について

  • 損失補てんの禁止の適用除外となる場合として、弁護士会仲裁センターの「あっせん和解」を定めることは賛成であるが、「あっせん和解」だけでなく「仲裁判断」を加えるべきである。
  • 損失補てんの禁止の適用除外となる場合として、弁護士が顧客を代理して行う和解を定めることには賛成であるが、和解金額が140万円以下の場合に限定する旨の要件は削除すべきである。

4. その他金融商品取引法に関係する項目について、一部規定を修正すべきである。


5. 銀行法・保険業法関連の事項について

  • 投資性の強い商品である特定預金等契約及び特定保険契約については、当該契約の特性と実情に鑑みて、消費者保護のための実効ある措置を講じるべきである。

6. 金融商品の販売等に関する法律について

  • 金融商品の販売に関する法律の適用対象に、海外商品先物取引等を追加することには賛成であるが、店頭デリバティブ等海外商品デリバティブのすべてを同法の適用対象に含めるべきである。
  • 金融商品販売業者等に説明義務が課されないこととなる「特定顧客」の範囲を拡大して、金融商品取引法上の「特定投資家」を加えることには反対する。「特定投資家」を加えるのであれば、「特定投資家」に対し業者が説明義務を負わない範囲は、金融商品取引法における取扱いと同様に「契約の種類ごと」とすべきである。

→(参考)これまでの日弁連の意見書(合計8)のうちの最近の主なもの


(※本文はPDFファイルをご覧下さい)