更生保護法案に対する意見書

2007年3月22日
日本弁護士連合会


 

本意見書について

政府は、2007年3月2日に「更生保護法案」を閣議決定し、国会に提出しました。この法案は、法務省に設置された「更生保護のあり方を考える有識者会議」(2005年7月~2006年6月)の最終提言に基づいて作成されたもので、現在の「犯罪者予防更生法」及び「執行猶予者保護観察法」を統合し、従来定められていた遵守事項を明確化することで保護観察の効果を強化することを目的にしております。


日弁連は、有識者会議の発足から最終提言に至る過程で、一貫して、更生保護の本質は社会内での指導・援護であり、「再犯防止」は更生保護の目的が達成されることによる 副次的効果であることを繰り返し主張してきました。しかし、当法案においては、依然として「再犯防止」を強調した構成となっているために、日弁連は、法案の修正を求める趣旨から意見書を取りまとめました。


意見の概要は以下の通りです。


  1. 更生保護の目的について
    目的の「又は」以下は、「これらの者が善良な社会の一員として自立し、改善更生をすることを助け、もって、これらの者が再び犯罪をすることを防ぎ、又はその非行をなくし、社会を保護し、個人及び公共の福祉を増進することを目的とする。」と修正すべきである。【法案第1条】
  2. 国の責務等について
    国及び地方公共団体の責務等の規定においては、関連する法務省・更生労働省等の諸機関を具体的に列挙し、組織の壁を越えた連携・協力を行うように規定すべきである。【法案第2条】
  3. 地方構成保護委員会について
    地方更生保護委員会については、「人格識見が高く、罪を犯した者の改善更生に熱意を有する者のうちから法務大臣が任命する」という規定を設けるべきである。【法案に条文なし】
  4. 仮釈放について
    (1)法務省令に定める仮釈放の基準については、積極的かつ適切な運用を促進することを明確化すべきである。【法案第34条第1項】
    (2)被害者等からの意見聴取については、予め保護観察対象者の同意のもとで、被害者等に対し改善更生の経過等を知らせ、被害者等・保護観察対象者の双方の意見・利益が適切に代弁され、かつ改善更生の妨げにならないための仕組みを設けることを規定すべきである。【法案第38条・第42条】
  5. 保護観察について
    (1)特別遵守事項は、東京ルール(社会内処遇措置のための国際連合最低基準規則)
    を踏まえ、対象者の改善更生に「特に必要と認められ」ることに加え、現実に達成可能な事項を定めるよう明文化すべきである。【法案第51条】
    (2)保護観察処分少年に対する「遵守事項違反に対する警告及び少年法第26条の4第1項の申請」は、国会で継続審議中の「少年法等の一部を改正する法律案」を前提とするものであり、削除されるべきである。【法案第67条】
    (3)仮釈放の取消しは、事後的に不服審査を保障するだけでなく、取り消す前に、保護観察対象者に対して告知聴聞の機会を保障し、遵守事項違反の有無、その理由、情状などについて意見を述べ、資料などを提出する機会を保障する旨の規定を置くべきである。【法案第75条】
  6. 生活環境の調整について
    裁判確定前の執行猶予付保護観察者の生活環境の調整について、保護観察を円滑にするために必要があると認められ、かつその者が希望する場合には、生活環境の調整を義務的に行えるようにすべきである。【法案第83条】

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