戸籍法の見直しに関する要綱中間試案についての意見書

2006年8月22日
日本弁護士連合会


本意見書について

本意見書は、2006年7月25日付で公表された戸籍法の見直しに関する要綱中間試案(以下「試案」といいます)について、日弁連の考えを意見として取りまとめたものである。日弁連は、2006年8月22日の理事会において、本意見書をとりまとめ、同年8月24日、法務大臣に提出しました。


意見の趣旨は、下記のとおりです。


  1. 戸籍謄抄本等の交付請求ができる場合
    試案では、戸籍の謄抄本等を交付請求できる場合を、自己の権利若しくは権限を行使するために必要がある場合、国若しくは地方公共団体の事務を行う機関等に提出する必要があることを明らかにした場合、これらの場合に準じる場合に限るとされている。しかしながら、戸籍の謄抄本等の請求を行う場合は様々であり、上記の表現では、戸籍謄抄本等の必要な場合を必ずしもカバーされているとは限らない。また、いかなる場合に戸籍の謄抄本等の交付請求をすることができるのかの判断が市町村の窓口の担当者に委ねられているとすると、実際の交付請求の場面において窓口の担当者との意見の相違により、必要な交付がなされない事態も想定される。そこで、事案の内容に応じてより柔軟な判断が可能となるよう、試案に記載されている場合だけでなく、「その他戸籍の記載事項を確認するにつき相当な理由があるとき」には交付請求を行うことができると明示すべきである。


  2. 有資格者による職務上請求
    試案では、有資格者による職務上請求の場合においても、依頼者名、請求事由の具体的内容を記載することを要するとしている。しかしながら、弁護士や認定司法書士の取り扱う業務内容は国民の紛争解決であり、その職務の性質上依頼者に関する極めてセンシティブな情報に接する機会も多い。もし、試案のとおり弁護士や職務上請求用紙に依頼者名や紛争の具体的内容を記載しなければならないと、依頼者に関する秘密情報について市町村の戸籍担当者に説明しなければならないことになり、依頼者はセンシティブな情報が外部に漏れることを慮って弁護士に真実を述べることを躊躇してしまう。このことは、適正な司法解決を妨げ、国民の裁判を受ける権利を侵害してしまうことにもなりかねない。市町村に集積された個人情報が過失によってインターネット等を通じて外部に流出してしまう危険性もある。戸籍の謄抄本等の交付請求に際して提供すべき情報についても限定される必要があり、受任事件の依頼者名を交付請求書に記載すべきとする案や、「自己の権利又は権限行使について必要があること」を交付請求書に記載することを要求する案はいずれも妥当でない。

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