「多重債務者の支援、公的対処の必要性」について(要望)

2006年7月27日
日本弁護士連合会


本要望書について

破産申立件数は、毎年、全国で約20万件あり、多重債務に陥り生活が破綻している人は150万人から250万人いると言われています。
サラ金・クレジット会社からの借金をかかえ、多重債務に陥っている人たちの多くは、取り立ての厳しい返済金は支払い続ける一方で、国税、地方税、国民健康保険料(税)、国民年金保険料等の公租公課や公共料金は滞納しているようです。
サラ金・クレジット会社は、ほとんどがいわゆるグレーゾーン金利での貸付けますので、この借金を利息制限法の法定金利で引き直して計算すると、多くの場合、返済期間が5、6年を過ぎると残債務は0円となり、それ以上の期間返済を続けると過払金が生じます。
すなわち、長い間返済している人ほど、法律上は借金がゼロ、もしくは過払いとなっているにもかかわらず、借金の返済を続けているというのが実情です。

これらの人々の借金を利息制限法の法定金利で引き直して計算し、債務を圧縮し、あるいはゼロすることで多重債務から解放することができ、それまでサラ金・クレジット会社に返済していたお金は、公租公課の支払いに充てることができます。また、過払金がある場合は回収し、そのお金で滞納している公租公課等を返済することができます。

そこで、日弁連は、2006年7月20日の理事会で、多重債務者を救済し、公租公課等の滞納を解消するため、国税庁、総務省自治税務局、厚生労働省保険局および社会保険庁に対して次の趣旨の要望をすることにしました。

  1. 税金(国税、市県民税)、国民健康保険料(税)、国民年金保険料を滞納している者が、徴収の窓口において多重債務者であることが明らかになった場合、地元弁護士会や日本司法支援センターの法律相談窓口など多重債務整理のための専門の相談機関を紹介されたい。
  2. 徴収担当者は、多重債務者のプライバシーに配慮しつつ、多重債務の解決や、債務圧縮の基本的アドバイスができる知識を獲得して、納税相談能力の強化に努められたい。
  3. 利息制限法の法定金利を超える利息を長期間にわたってサラ金・クレジット会社に払っている滞納者については、積極的に過払金回収の援助をするなどして、生活を立て直し、滞納状態解消のための建設的手だてを指導されたい。

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