下級裁判所裁判官指名諮問委員会における面接等に関する申入書

2005年2月7日
日本弁護士連合会


 

第1 申入れの趣旨


下級裁判所裁判官指名諮問委員会における「指名の適否について慎重な判断を要する者(重点審議者)」に対する審議にあたっては、面接について、より積極的な運用がなされるとともに、不適格の答申がなされる可能性のある指名候補者に対しては、原則として面接を実施し、弁明及び反証の機会が与えられるよう申し入れます。


第2 申入れの理由

  1. 貴下級裁判所裁判官指名諮問委員会(以下「貴委員会」という。)は、2003(平成15)年5月1日、「指名過程の透明性を高め、国民の意見を反映させるため、国民的視野に立って多角的見地から意見を述べる機関」(最高裁判所ホームページ)として発足して以来、二年度にわたり、司法修習生からの任官、弁護士任官及び再任(判事補からの判事任命を含む。)の指名候補者に対する審議を行い、その適否につき最高裁判所に答申してきました。
    当連合会は、この間の貴委員会の活動に十分敬意を表すとともに、今後さらに貴委員会制度を充実・発展させる観点から、以下の申入れを致します。

  2. 指名候補者の面接については、貴委員会においては、「絶対に排除するものではなく、また、一律に行うものでもなく、状況に応じて、面接というプロセスを通した方がよいと委員会で判断した場合にケースバイケースで行う」(貴委員会・第12回議事要旨)ものとされております。
    しかしながら、結局、上記二年度の間、貴委員会及び地域委員会において指名候補者に対する面接が一度も実施されていないことからすると、貴委員会においては、地域委員会を含めて、面接については、極めて消極的な運用がなされており、それゆえ、面接を通じて、不適格の答申がなされる可能性のある指名候補者に対して弁明及び反証の機会を与える運用もまた、なされていないものと考えられます。

  3. 貴委員会では、運用上、「指名の適否について慎重な判断を要する者(重点審議者)」を選別し、これらの者(以下「重点審議者」という。)について重点的に裁判官としての適格性の有無が審議され、その判断がなされております。
    そうだとすると、貴委員会がこれらの重点審議者について裁判官としての適格性の有無を実質的に判断するためには、審理充実の観点から、第三者からの評価資料・情報だけによるのではなく、面接によって本人から直接意見を聴取し、またその自己評価資料・情報を収集して、これらを互いに対照しながら総合的・多角的に審議し、判断することが必要であり、かつ、裁判官としての身分適否の岐路に立たされている本人にとっても、面接を通じて、自ら積極的に資料等を提供し、また第三者からの資料等に対する弁明及び反証の機会が与えられることは、公平の観点からも望ましいものと解されます。これらの点からすると、重点審議者に対する面接は、本人から直接、自己評価資料等を収集し、その弁明等の意見を聴取する手段として有用であることは疑いがありません。
    貴委員会規則(最高裁判所規則第6号)において、第10条に「委員会は、その所掌事務を遂行するために必要があると認めるときは、指名候補者に対して必要な説明を求め、又は指名候補者の意見を聴くことができる」(地域委員会は同条を第17条で準用)と、特に独立した規定が設けられたのは、こうした面接の有用性に鑑み、その積極的な活用が期待されたうえでのものと解されます。

  4. 以上のことから、当連合会は、貴委員会におかれては、上記各規定をより積極的に活用し、重点審議者に対する審議にあたっては、面接について、より積極的な運用がなされる必要があるものと考えます。そして重点審議者のうち、とりわけ不適格の答申がなされる可能性のある指名候補者に対しては、さらにいっそう審理充実及び適正手続の観点から、上記各規定に基づき、原則として面接を実施し、その判断の基礎となる資料・情報及びその理由等に対する弁明及び反証の機会が与えられなければならないことは当然のことといえます。
    貴委員会に対しては、2003(平成15)年12月2日に不適格とされた指名候補者のうち、弁護士任官候補者1名から「指名候補者として不適と判断された理由を説明してもらいたい」旨の要請がなされ(貴委員会・第7回議事要旨)、また再任候補者1名から「再任希望者を不適格と判断するに際しては、委員会、少なくとも地域委員会における面接を実施するよう要請する」旨の文書が送付されております(同・第12回議事要旨)。当連合会としては、これらの指名候補者らに対しては、少なくとも上述の審理充実及び適正手続の観点から、貴委員会において、面接が実施され、弁明及び反証の機会が与えられるべきであったのではないかと考えます。

  5. よって、以上の理由により、当連合会は、貴委員会に対し、意見の趣旨記載の申入れを致す次第です。

以上