未決等拘禁制度の抜本的改革を目指す日弁連の提言

2005年(平成17年)9月16日
日本弁護士連合会


本提言について

第1章 未決拘禁制度の抜本的改革

第1 無罪推定と未決拘禁者の処遇

未決拘禁は無罪推定原則を生かし、保障する内容でなければならない。


第2 接見に関する改革

一般面会を含む接見の拡充と、そのための施設整備を進めるべきである。


第3 電話等を利用した外部交通

1.電話を利用した外部交通の3つのパターン


(1)弁護人と未決拘禁者との間の電話等を利用した秘密交通権の行使としての接見交通
弁護人の刑事訴訟法第39条第1項の秘密交通権を実質的に保障する一態様として、弁護人と被拘禁者との間の電話等による接見交通が認められるべきである。

根拠:適切な時期に適切な助言が必要。必要性がある場合の例は、以下のとおり。


  • [1] 弁護人の通常執務している場所と被拘禁者が拘禁されている場所との距離が離れている場合(いわゆる弁護士過疎地の場合に限らない)

     ・いわゆる弁護士過疎地
     ・支部管内の事件が本庁で起訴された場合
     ・従前の信頼関係から遠方の弁護人が選任された場合

    [2] 時機をのがしては適切な助言が事実上不可能になるような場合

      ・逮捕された直後の初回接見等


(2) 弁護人と未決拘禁者との間の電話等を利用した接見交通のうち、秘密交通権の行使でないもの
弁護人の弁護権を実質的に保障する一態様として認められるもので、弁護人の刑事訴訟法第39条第1項の秘密交通権の行使ではない形態のものとして、弁護人と被拘禁者との間の電話等による接見交通。

必ずしも秘密が守られなくてもよい内容(いつ接見に行く等の連絡や、家族や職場への伝言など)も含めて、被拘禁者が弁護人との間で頻繁に連絡をとることができるということが、弁護権の行使を実質的なものとする。




(3) 未決拘禁者と接見を禁止されていない者との間の電話等を利用した接見交通
未決拘禁者が無罪推定を受ける者として有する社会との交流を続ける権利を実質的に保障するための一態様として、未決拘禁者と、接見を禁止されていない家族らとの間の電話等による接見交通。


2.それぞれの要件と態様


(1) 秘密交通権としての電話等の使用
弁護士であることの確認を要する。

弁護士会、検察庁、警察署、司法支援センターなどの電話ボックス等から施設に電話し、被拘禁者も電話ボックス等で立会いなしで弁護士の電話を受ける。弁護士が電話ボックス等に入退室する際、弁護士であることが確認されることを要件とする。もちろん、電話はモニターされない。


(2) 一般的弁護権行使としての電話等の使用
弁護士であることの確認を要するが、確認の方法は(1)とは異なる態様がある。

法律事務所にいる弁護人との電話ができる。弁護士であることの確認は、所属する法律事務所の電話番号に施設側の担当者が電話をすることによって行う。この場合は、未決拘禁者に拘禁されている施設の職員が立ち会うことも、電話をモニターすることもできる。


(3)一般的外部交通としての電話等の利用
接見禁止でなければ、電話等の相手方の本人確認は不要。接見禁止だが一定の親族等に限って接見が認められている場合は、当該本人であるかどうかの確認を要する。

電話による面会の相手方が未決拘禁者の申し出た相手方本人であることの確認は、その者の電話番号に刑事施設側の担当者が電話をかけることによって行う。この場合は、被拘禁者に施設の職員が立ち会うことも、電話をモニターすることもできる。


3.ファックスの利用
簡単な事務連絡や、定型的な連絡


第4 信書の検閲

弁護人と被疑者・被告人との間の信書の授受は、秘密交通権の一内容であり検閲されてはならない。


第5 外部交通に関連するその他の問題

法廷での弁護人とのメモ授受の自由化や、取調べに関しては長時間にわたる取調べの規制、弁護人立会権、可視化措置等が不可欠である。


第2章 代用監獄の廃止とそれに至るまでの課題 

第1 代用監獄廃止の必要性

警察留置場は、被逮捕者を司法当局に引致するまで一時的に留め置く場所にすぎず、被疑者を勾留すべき施設ではない。捜査機関が被疑者の身体を管理する代用監獄は、冤罪と人権侵害の温床であって、廃止されねばならない。


第2 国際人権法による警察拘禁に対する規制

確立された国際人権基準に照らし、逮捕された被疑者の身体は、裁判官の面前に引致された後は警察に戻してはならず、被疑者を23日間警察に拘禁し、尋問を継続できる代用監獄制度は許されない。


第3 代用監獄廃止への道筋・方法

全国に拘置所を新増設し、拘置所の収容力を増強すると同時に、代用監獄の所管を警察から法務省に移し、無用な勾留を廃し未決拘禁者の絶対数を減らすべきである。


第4 警察留置場に関する改革~代用監獄廃止までの課題

1.懲罰の新設と拘束具使用の問題点
無罪推定を基本とする処遇原則から、留置場における懲罰が新設されてはならない。また、最近も死亡事件が発生した防声具はそれ自体極めて危険で、医療上の観点からも不適切であり、自白強要手段とされるおそれもあるので、禁止されるべきである。


2.医療の問題点
警察留置場には医療態勢がなく、被収容者の生命身体の保全上、重大な問題点がある。こうした警察留置場は代用監獄としてすら使用すべきではない。


3.視察委員会の新設
警察留置場にも刑事施設視察委員会と同様の視察機関を設置すべきである。


4.その他
一定事案の拘置所収容の原則化、被疑者・被告人の移監請求権など


第3章 拘置所における改革

第1 夜間・休日の接見

1.夜間・休日接見の必要性
被疑者・被告人の弁護を受ける権利を保障するため、弁護人との夜間・休日接見は不可欠である。また、一定の条件下で夜間・休日の一般面会も認められるべきである。


2. 接見交通権を十全化するためのその他の方策
面会室の増設・接見時の書類の授受・拘置所以外の接見場所の拡充・接見におけるカメラ等による記録方法の拡充・証人テストとしての無立会面会を実現すべきである。


第2 作業・教育

拘置所の未決拘禁者に対して作業と教育の機会を保障すべきである。


第3 生活条件

無罪推定を受ける地位にふさわしく拘禁性の高い環境の改善、毎日1時間の戸外運動の保障などが必要である。


第4章 死刑確定者の処遇 

法務省の「心情の安定」論による外部交通の相手方の制限などは、あまりに広汎であり、内心の自由の問題にもかかわる。国際人権(自由権)規約に照らし未決拘禁者と同等の外部交通権保障や死刑執行の事前告知が必要である。


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