「今後の労働契約法制の在り方に関する研究会」中間取りまとめについて -今後の検討方法及び意見募集の実施に関する要望-

2005年(平成17年)6月15日
日本弁護士連合会


 

「今後の労働契約法制の在り方に関する研究会」(以下「研究会」という。)は、2005年4月13日、「『今後の労働契約法制の在り方に関する研究会』中間取りまとめ」(以下「中間取りまとめ」という。)を発表した。労働契約法制の在り方は、わが国の今後の雇用社会に重大な影響を与えるものであり、われわれも研究会の検討と中間取りまとめについて大きな関心をもって注目してきたところである。


今回の中間取りまとめは、労働契約法の制定を目指しており、その内容も労働契約全般に関する包括的なもので、また新たな制度(労働者代表機関の設置、雇用継続型契約変更制度、解雇の金銭解決制度等)の創設の提案も行われている。この労働契約法制は、今後の労使関係に多大な影響を与えるものであるから、研究会においては実態を踏まえた慎重な論議がされることが期待される。ついては、今後の研究会における論議と労働政策審議会での審議にあたって、次のとおり要望するものである。


第1に、研究会は、あくまで労働政策審議会での審議のために、特に法的論点を検討するために設置されたものである。このことは、研究会の参集者の構成が、弁護士1名の外は、学者8名、法務省民事局参事官1名で、実務経験者は全く含まれていないことからも明らかである。本来は、厚生労働大臣の諮問機関である労働政策審議会及び同審議会の労働条件分科会が、議論の主舞台である。研究会は、この労働政策審議会での議論が充実してなされるように準備することが任務であり、研究会の報告書は、実態を調査し、主として法的論点を整理するものでなければならない。労働政策審議会での審議前に、一定の結論を出すものであってはならないと考える。最終報告に向けた今後の研究会の討議においては、結論を先取りするようなものではなく、労使関係の実態を踏まえた慎重な討議が行われるべきである。


第2に、中間取りまとめに対する意見募集期間が極めて短期間であることは問題である。特に、2005年4月13日の中間取りまとめの発表にあたっては、厚生労働省は意見募集を行うことを明示しなかった。その後、同年5月19日になり、研究会が労働政策審議会労働条件分科会での意見を受けて意見募集を行うと決めた経過があった。翌5月20日に意見募集を行うことを発表したが、募集期間はその日からわずか1か月という短期間である。意見募集を行う場合には早期にその旨を発表し、余裕をもった期間を設けるべきである。


第3に、労働契約法制は増加している個別労使紛争の解決の基準になることを考えると、労働政策審議会ないし同審議会の労働条件分科会には、労使の立場で実務に携わる弁護士がメンバーに入ることが望ましいと考える。司法制度改革にあたり、労働検討会に労使のそれぞれの立場で実務に携わる弁護士が参加することで討議が深まったことも参考にされるべきである。


当連合会としては、今後も法律実務家の立場から、研究会の討議を注目し、検討を重ねる予定である。


以上