貸金業関係の事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係)の一部改正(案)」に対する意見書

2005年3月18日
日本弁護士連合会


本意見書について

金融庁が本年3月4日付けで公表し、意見募集を行っている「貸金業関係の事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係)」の一部改正について、当連合会は次のとおり意見を述べる。


第1 ガイドライン改正に対する意見

「利用者保護の徹底を図るため、貸金業者の説明責任を強化するとともに説明責任を果たすための態勢整備を強く求めるとの観点から改正するもの。」との改正の趣旨には賛成である。


しかし、今般のガイドラインの改正案には、第2で述べるように、貸金業者の説明責任強化及び態勢整備を強く求めるものとしては不十分な点がある。


また、貸金業者の説明責任については、罰則による実効性の確保も必要であり、ガイドラインの改正に止まらず、今後、法律及び施行規則改正の取り組みをなすべきである。


第2 改正案の内容に対する意見

1貸金業の規制等に関する法律13条第2項の規定に該当するおそれが大きい事項を列挙した3-2-2には、説明責任についての態勢整備に関する事項のみが掲げられ、説明責任それ自体は、3-2-7として新設規定とされているが、説明責任が確実に実行されるようにするためには、3-2-7に定める説明責任が実行されない場合それ自体についても、3-2-2の例示列挙に加え、行政処分の対象となることを明らかにすべきである。


2 公正証書作成委任状についての説明責任に係る規定の新設(新設3-2-7(5))について


賛成する。但し、以下の事項を付加すべきである。


貸金業者が説明を尽くすべき内容を具体的に例示しておかないと、なお形式的説明にとどまる恐れがある。そこで実質的な内容の例示として、例えば


  1. 公正証書が作成されると、貸金業者は、あなたに対する裁判手続を経ることなく、その公正証書に基づき、裁判所に対し、あなたの給料・売掛金・動産・不動産への強制執行を申し立てることができます。
  2. 公正証書は利息制限法所定の制限の範囲内でしか作成することができませんが、借換等をする際に公正証書を作成する場合には、利息制限法上有効に存在する債務残高と異なる貸付金額に基づいて公正証書が作成されてしまう恐れがあります。
  3. 仮に利息制限法上有効に存在する債務残高と異なる公正証書が作成されたり、あなたの弁済内容が正しく反映されずに過大な債権額に基づき強制執行がなされたりしても、あなたが、自ら請求異議訴訟等を提起して、強制執行の取消等の申し立てをする負担を負うことになります。

を列挙すべきである。


3 「貸金業者が保証人となろうとする者に対して説明すべき事項は、保証契約の形式的な内容にとどまらず、保証人の法的効果とリスク等の実質的な内容にも及ぶことを補足(新設3-2-7(3))」について


賛成する。但し、以下の事項を付加すべきである。


貸金業者が説明を尽くすべき「最悪のシナリオ」の内容を具体的に例示しておかないと、なお形式的説明にとどまる恐れがある。


そこで、「最悪のシナリオ」の具体的内容として、例えば、


  1. 連帯保証人には、催告の抗弁権・検索の抗弁権がないこと。
  2. 主債務者から「迷惑を絶対にかけない」「自分が払う」「名目だけである」などと説明をされていても、主債務者が支払を怠った場合は、貸付残金に遅延損害金を付した金額を一括で支払わなくてはならないこと。
  3. 保証債務を履行するために財産を処分しなければならなくなったり、保証債務を履行できない場合には強制執行等により給料や売掛金等を差押えられたり、破産等の手続きを申し立てざるを得なくなる場合もあること (保証人予定者の職業・財産状況等に即して具体的に説明すること)。

を列挙するべきである。


4 「貸金業の規制等に関する法律第13条第2項違反に該当するおそれの大きいものの例示の追加(3-2-2(2))」について


賛成する。但し、以下の事項を付加すべきである。


かかる周知徹底を図っているか否かを確認するためには、「社内規則」「業務マニュアル」「従業員研修の日時・内容」「違反が存した従業員・管理者に対する貸金業者の対処(懲戒処分の有無等)」を財務局又は都道府県知事に届け出をさせ、これをホームページ等で公表させる必要がある。


第3 改正案が不十分であるからさらに追加すべき点

今回の改正案は、特に保証契約の法的効果と、強制執行認諾付き公正証書の作成委任状を交付する場合の内容・効果についての貸金業者の説明責任等を強化しようとするものであるが、利用者保護の観点からは、さらに例示として、以下の点を貸金業者の説明責任として追加・補足すべきである。


  1. 利息制限法を超える約定利息を定める貸付について
    一.利息制限法を超える約定部分が無効であること

    二.超過部分の支払を強制されないこと
  2. ガイドライン3-2-8(改正後)(1)の「債務者、保証人その他の債務の弁済を行おうとする者から、帳簿の記載事項のうち、当該弁済に係る債務の内容について開示を求められたときには協力すること。」との規定は、貸金業者の説明責任の一類型を定めたものといえるが、貸金業者の中には、「債務の弁済を行おうとする者」との文言を根拠に、利息制限法所定の制限利率による充当計算を行うと債務不存在あるいは過払となる場合には、「債務の弁済を行おうとする者」には該当しないとして取引履歴の開示に協力しない者が多い。そこで、貸金業者の貸付後の取引内容にかかる説明責任の強化という観点から、このガイドラインの規定について、上記のような貸金業者の解釈を許さないために、「債務の弁済を行おうとする者」の文言を削除し、「債務者、保証人及びその代理人、あるいは代位弁済者から、」との文言に改めるべきである。また、開示すべき範囲を明文化し、過去の取引履歴(貸借関係が中断していた場合の以前の取引履歴も含む)を全て開示することを義務付けるべきである。

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