不法投棄の未然防止及び適正解決を徹底するため廃棄物処理法の改正等を求める意見書

2004年7月15日
日本弁護士連合会


本意見書について

1.大規模不法投棄事件の頻発が物語る現行廃棄物処理法制の不十分さ

豊島事件によって我が国でも大規模な不法投棄による環境破壊が問題視されるようになったにもかかわらず、その教訓が生かされることなく行政が処理業者等の違法行為に対して及び腰の対応を続け、あるべき法改正も行われなかった結果、その後も、豊島事件以上の規模である青森・岩手県境不法投棄事件などの大規模不法投棄事件が頻発している。


国も、近年では処理業者等に対して厳しく監督権を行使するよう都道府県等の現場行政に対し励行しているが、なお不法投棄が後を絶たない現状に鑑みれば、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」という。)を初めとする廃棄物処理法制自体に大きな不備があり、監督権行使の励行以外にも大幅な法改正等が必要と言わなければならない。


2.廃棄物処理法制につきなされるべき改正(他の法律で導入しうるものも含む)

まず、有価物偽装の根絶のため廃棄物の定義の客観化を徹底すべきである。またマニフェストの偽装による不法投棄を防止しさらには処理業等がマニフェストを廃棄した場合でも排出事業者への責任追及を確実に行いうるようにするため、電子マニフェストなどのIT技術を利用し処理情報の公的管理制度や処理状況のチェックシステムを導入すべきである。また処理業者が過剰に廃棄物を受け入れて自社敷地等に不法投棄するのを防止するため、処理施設の廃棄物の受入状況等についても、データベース化や行政の監視、情報公開の制度を導入すべきである。


次に、地域住民が地域の環境保護に重要な役割を果たすことに鑑み、住民等が都道府県知事に対し監督権発動を促す申立権を認め、これが履行されない場合には先般導入された行政に対する義務づけ訴訟だけでなく住民等が自ら行政権限を代位して処理業者等に対して監督権を行使できる制度も導入されるべきである。


次に、汚染者負担原則を徹底するため、排出事業者に対する措置命令を強化し、排出事業者は原則として委託先の処理業者等が行った不適正処理ないし不法投棄に対する原状回復義務を課すべきであり、またそれと併せて強制保険や基金の義務化により原状回復費用の確保に努めるべきである。そして、これら手段により費用回収を行うことを前提に全量撤去を原則とする代執行を行政に義務づけると共に、上記制度によっても代執行費用を確保できない場合には、公害等調整委員会による裁定に基づき監督義務を負っている関係自治体間で責任割合を定めて費用を分担する制度を導入すべきである。また早期の責任追及のため廃棄物処理法違反を理由とする刑事事件の公判記録は係属中も閲覧可能にすべきである。


また、汚染調査を徹底するための専門家の関与や住民参加の確保、事件に対する事後検証の徹底、広域的不法投棄に対処するための都道府県等の権限調整規定、自圏内処理の原則化などを定めるべきである。


3.廃棄物処理法制以外になされるべき改正

拡大生産者責任の徹底のための製品の無償回収、廃棄物犯罪を犯した者から没収した犯罪収益を原状回復費用に使用することなどを定めるべきである。


4.法改正以外に行われるべき施策、現行法の運用

現場行政に対し監査機関を設置すること、廃棄物行政に対する住民参加を推進し環境保護団体等を活用すること、優良業者の育成、公益通報者保護制度の積極活用、不法投棄が発覚した場合に処理業者等からマニフェストを確保するための手続等の徹底、廃棄物犯罪における犯罪収益の没収保全命令の活用、代表者への責任追及、県境型不法投棄事件における相互協力や公調委の活用、市町村への権限委譲等による役割強化、大規模不法投棄現場の環境教育への活用等、過疎地域における不法投棄事件では過疎問題克服のための施策が必要であることなどが挙げられる。


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