防声具・鎮静衣・ベルト手錠廃止の申入れ

日弁連総第10号
2004年5月12日


 

国家公安委員会委員長 小野 清子 殿
警察庁長官      佐藤 英彦 殿


日本弁護士連合会
会長 梶谷 剛


 

防声具・鎮静衣・ベルト手錠廃止の申入れ


去る4月21日未明、和歌山東警察署の留置場内において、50歳代の男性が、口に防声具を使用された上、手足をナイロン製の手錠で固定された状態で死亡するという事件が発覚しました。


防声具は、口の周囲を完全に覆うマスク状の戒具であり、1956(昭和31)年10月4日には、刑事被告人に対して使用されたところ、わずか20分にして窒息死した事例もある、危険な戒具です。このため、法務省はすでに通達により、防声具の使用を鎮静衣とともに廃止しています。それにもかかわらず、このように危険な戒具が、警察留置場においては、被疑者留置規則(昭和32年国家公安委員会規則第4号)によっていまだに合法化されていることは、極めて重大な問題であります。


また、今回、鎮静衣の代わりに使用されたというナイロン製のベルトは、被疑者留置規則に基づき制定された「留置場において使用する戒具の制式および使用手続きに関する訓令(警察庁訓令第18号)」所定の「ベルト手錠」と呼ばれるものです。これは、腰ベルトの左右に手首を固定するための輪が設けられ、後部で止める形態の戒具であり、名古屋刑務所における死傷事件を惹起し、かつ、法務省が昨年10月より廃止した旧「革手錠」と同様の機能を有するものです。本件における使用の態様いかんにかかわらず、それ自体として極めて危険な戒具であることは言うまでもありません。


当連合会は、今回の死亡事件について、違法な実力行使の有無を含め、その原因が徹底的に解明されるよう求めるとともに、防声具・鎮静衣・ベルト手錠を即時廃止するよう、強く申し入れます。


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