「米軍支援・自衛隊活動に関する法案・案件」についての意見書要旨

2004年4月17日
日本弁護士連合会


本意見書について

第1.米軍支援に関する法案

1.米軍支援の法的枠組みと問題点

根拠は安保条約3、5条。支援対象を「武力攻撃事態等」に、支援機関等を「自衛隊」から「指定行政機関」に拡大。法的問題点は、憲法の範囲内か、憲法の平和主義及び9条に違反するか否か。


2.「米軍支援法案」の特徴と問題点

(1) 「武力攻撃事態等」の曖昧さと恣意性


「武力攻撃事態等」は「予測」を含み、曖昧で恣意的解釈の危険。「周辺事態」と「武力攻撃予測事態」の並存・連動の危険。


(2) 武力行使と一体とみなされる支援活動


弾薬の補給、軍用機、軍用車両及び軍用艦船の部品の提供を認め、米軍と一体となった軍事的活動とみなされる内容。支援内容は包括的。政府への白紙委任。集団的自衛権の行使に該当するおそれ。


(3) 支援を受ける「米軍の行動」の無限定性


「武力攻撃を排除するため」は、政府見解を前提にしても米軍支援の要件として不十分。「必要な準備のため」は、余りに広範で漠然。不明な「準備」段階での米軍支援は、支援を無限定なものとし、憲法違反との疑いを強める。


(4) 行政・自治体・民間による支援とその問題点


自治体・民間の努力責務は、事実上の強制をもたらす。


(5) 人権侵害のおそれ


防衛出動が命じられている「武力攻撃事態」の下で、米軍が道路工事,道路以外の土地の通行、通行妨害物件の破損等を行えることを前提として、通知または補償規定を置く。収用委員会の判断なくして米軍支援のために強制使用する権限を総理大臣に付与。


3.「自衛隊法改正法案」

物品・役務提供の対象を「米軍が災害応急対策を行っている場合」等に大幅に拡大。広範囲の物品・役務の提供(武器・弾薬の提供を除く)。米軍支援を自衛隊本来の任務とし法的側面でも一体化を進める。


4.「ACSA」の改定

支援対象に「武力攻撃事態等」を加え、弾薬等を提供し、戦闘行為との一体化の懸念を増大。


支援対象を「国際の平和及び安全に寄与するための国際社会の努力の促進、大規模災害への対処その他の目的のために日本国の自衛隊またはアメリカ合衆国軍隊がそれぞれの国の法令に従って行うもののために必要な後方支援、物品又は役務の提供」まで拡大。


テロ特措法・イラク特措法に基づく米軍支援内容は、日米の合意により修正可(協定の改定不要)。


第2.米軍支援・自衛隊活動に関する法案

1・2.「特定公共施設等利用法案」の目的・内容

「武力攻撃事態等」において、自衛隊の行動・米軍の行動等を支援するために、港湾・飛行場施設、道路、海・空域及び電波の利用に関し、優先利用行いうる仕組みを新設。米軍・自衛隊等に対し優先利用させる権限を対策本部長等に付与。緊急対処事態でも一定の範囲で準用。


3.問題点

優先利用を認める実体的要件・公正かつ適正な判断を保障する手続的規定が不十分。


第3.自衛隊の活動に関する法案

1・2.「外国軍用品海上輸送規制法案」の目的・内容

「武力攻撃事態」において、公海上で外国軍用品等の海上輸送規制のため、防衛出動命令を受けた海上自衛隊が「実施区域」内で停船検査、回航措置を行う。


3.問題点

(1) 海上規制の法的根拠


憲法の交戦権否定、戦争を違法視する国連憲章を踏まえると、交戦権を根拠に海上規制措置を正当化するのは無理。自衛権にて公海上の「外国軍用品等」規制を行うのは政府の個別自衛権行使要件を変更しない限り困難。


(2) 停船検査における武器使用


停船命令・回航措置の実施について、乗組員の抵抗、又は当該船舶の逃亡の場合に、船舶を停止するための武器使用を認める。


第4.結論

曖昧な法的要件の下で行政権に対して強大な権限を付与する構造で、「有事事態における法による行政・自衛隊の民主的コントロール」とは程遠い内容。抜本的見直しが行われない限り、法案・案件に反対。今国会での拙速審議・採択に反対。


以上


 

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