養育費支払確保のための意見書

2004年3月19日
日本弁護士連合会


本意見書について

1.1992年の意見書

当連合会は、1992年に「離婚後の養育費支払確保に関する意見書」を公表した。この意見書は、離婚の90%以上を占める協議離婚において、養育費の取決め率・履行率が低い現状に鑑み、養育費の支払いを確保するための制度改革を提言するものであった。


2.今回改めて意見書を公表する理由

従来の提言を公表以来12年経過した今日においても、提言した改革のうち実現されたのは、2003年の民事執行法の改正により、予備差押制度が新設された点(法151条の2)、同じく2003年の人事訴訟法の改正により離婚判決に付帯処分として養育費の額等を定めうることを明記した点(法32条)のみであって、他の提言は未だ実現されておらず、養育費の支払状況は依然として芳しくない。


今回改めて意見書を公表する理由としては、(1)近年離婚数の増加に伴って、親の離婚を経験する子どもの数も増加しており、養育費支払確保の必要性が益々高まっていること、(2)母子家庭の平均収入は一般家庭の約3分の1と著しく低いこと、及び女性の不安定就労の増加により、その現状は改善される見込みが乏しいこと、(3)それどころか2003年の児童扶養手当法改正により手当が削減されたことにより、母子家庭の生活が益々逼迫していることなど、今日提言の実現が一層急務となっていることがあげられる。


2003年に法制審議会の担保・執行部会で扶養義務の間接強制の是非が議論された際(日弁連は導入反対の立場)、養育費の支払い確保方法についても問題とされたが、むしろ最も有効な方法と考えられる養育費取決め・支払確保制度に関しては関係者に周知されておらず、実現は図られていない。


3.従来の意見書との相違点

  1. 従来の提言ですでに改正が実現した、将来分の差押を可能とする制度の提言、及び離婚判決に付帯処分として養育費の額等を定めうることを明記する旨の提言項目を削除した。
  2. 養育費の支払いが問題となるのは、離婚後の子どものみならず婚外子も同様であるため、婚外子の養育費についても提言の対象とした。

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