自衛隊のイラクへの派遣に反対する理事会決議

2004年2月3日
日本弁護士連合会

 

石破防衛庁長官は、2004年1月26日、イラク特措法に基づき陸上自衛隊本隊と海上自衛隊に対し、イラクへの派遣命令を出した。派遣隊員は、すでに派遣命令の出されている航空自衛隊等をあわせ、陸海空の3自衛隊で1000名以上にのぼる見込みであり、本日陸上自衛隊施設部隊がイラクに向けて出発した。


当連合会がすでに指摘したとおり、イラク特措法は、イラクにおける自衛隊の武力行使を容認することにつながるものであり、国際紛争を解決するための武力行使および他国領土における武力行使を禁じた憲法に違反するおそれが極めて大きい。


しかも今回の派遣は、国連のPKO活動に対する協力としてなされるものではなく、国連の要請もイラクの同意も存しない。米英によるイラク侵攻は、国連憲章に反するばかりか、大量破壊兵器等が発見されず、米英の主張した正当性さえ失われている。自衛隊の活動は、そのような侵攻の戦後処理としての占領行政に対する協力にほかならない。


現在イラクでは、米兵等に対する攻撃が全土で連日のように発生し、自衛隊の派遣予定地に近いナシリヤでイタリア軍に多数の死傷者がでるなど、その治安は依然として危険な状態にある。国連事務所や国際赤十字事務所も攻撃を受けており、国際機関職員や外交官の安全すら確保されていない。米軍も認めるとおり、「イラクは戦争状態にあり、その全土が戦闘地域」であり、安全な「非戦闘地域」などが存在しないことは明らかである。「自衛隊等の対応措置は非戦闘地域において実施し、武力による威嚇または武力行使にあたるものであってはならない」とするイラク特措法の基本原則からみても、イラクに自衛隊を派遣することは許されないものである。


このような状況下でイラクに自衛隊が派遣されるならば、米軍の協力者として格好の攻撃目標となり、自衛隊員が死傷する事態、自衛隊員が装備する対戦車砲等を用いてイラク国民に対し武力行使をせざるを得ない事態が発生することは必至であり、さらに大使館員やNGO関係者など、イラク国内の日本人が広く攻撃の標的となるおそれすらある。


「テロに屈してはならない」「汗を流す必要がある」との掛け声のもとに、若い自衛隊員の尊い生命が犠牲とされること、また自衛隊の武力行使によりイラク国民に犠牲者を出すことは、決して容認できない。


わが国は、国連を中心とした枠組みのもとで、非軍事的な分野・手段でイラクの復興を支援すべきである。


当連合会は、自衛隊のイラク派遣に強く反対し、政府に対し、既に派遣された自衛隊の即時撤退と今後の派遣中止を求めるものである。