肱川流域委員会の委員の追加と十分な審議を求める意見書

2004年1月16日
日本弁護士連合会


本意見書について

河川法の改正 -住民参加規定の新設

1997年、河川法が大きく改正され、住民意思を河川管理計画の策定手続に出来るかぎり反映させようとする規定が新設された。これはかねてから当連合会が河川行政に住民参加の制度を創設するよう求めてきたことに合致するものであった。その結果、各地に広汎な分野から選出された住民などが多く参加する流域委員会が設置されたり、委員が主体的に審議できる方式を新たに工夫するなどの試みがなされるなど、淀川流域委員会での試みを筆頭に改正の趣旨を活かそうとする法の運用が定着しつつあると認識していた。


改正と逆行する動向

ところが、最近、このような新しい潮流に対して、流域委員会の委員構成を偏頗なものとしたり、審議方式などを聞き置く的にするなど換骨奪胎して御用機関的なものとしようとする動きが出てきた。これは住民の意思を軽視するものであり、再び、改正前のように行政機関が管理計画の策定権限を独占する結果となりかねず、明らかに改正法の趣旨に反し、逆行的な法運用の動きであると言わざるを得ない。このような動きをこのまま放置すれば、これまでの新しい潮流や各地での努力が無に帰してしまう。そして、その象徴的なケ-スが本意見書で取り上げている肱川流域委員会の実態であった。


肱川流域委員会の実態 -極めて特異

肱川は愛媛県を縦断するように流れて瀬戸内海に流れ出る一級河川で、河川管理上、山鳥坂ダムの建設計画の是非が古くから問題となっている。当委員会は、昨年10月に愛媛県の松山市や肱川町などを訪れて、現地調査を実施し、国、県及び関係住民などから事情を聴取した。その結果、次のような実態が確認できた。まず、肱川流域委員会を構成する委員はすべて地元の整備局の直接の選任によっていた。その構成も学識経験者のほかはすべてダム建設について賛成の者たちであった。また、審議期間についても設置者は約6ケ月を予定していると明言していた。このようにその実態は、初めから山鳥坂ダム建設ありきの結論を前提とした人選や審議方式であったのである。


意見書公表の必要性

この肱川流域委員会の実態は、他の各地の流域委員会と比較しても極めて特異であることは当委員会の行った流域委員会の実態調査からみても明らかである。多くの環境団体が危惧しているように改正法の趣旨を著しく没却するだけでなく、これを放置すれば、その影響は単に一地方に止まらず全国に波及し、これまでの新しい潮流を差し止め、逆行させることになってしまいかねないとの結論に達した。しかし、四国地方整備局は平成15年度内には整備計画の策定を終えようと予定しており、残された時間はわずかである。


よって、このような改正の趣旨を没却しようとする動きを早急に指摘し、適正な法の運用を実現するために至急に本意見書を公表したい。


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