司法修習給費制の堅持を求める決議

2003年8月22日
日本弁護士連合会


 

司法修習の給費制を廃止しようという動きが急展開をみせている。


この問題の議論の発端となった司法制度改革審議会意見書は、給費制の在り方を検討すべきとするにとどまり、その廃止を提言したものではなかった。


ところがその後、財務省の財政制度等審議会が「平成16年度予算編成の基本的考え方について」(建議・平成15年6月9日)の中で給費制の早期廃止を提言するなど、財務省筋を中心とした圧力が強まるなか、司法制度改革推進本部の法曹養成検討会は本年7月14日の第18回検討会において、必ずしも充分な議論を尽くさないまま、「貸与制への移行という選択肢も含めて柔軟に検討する」との座長とりまとめを行った。


しかし、給費制は、その生活を保障することによって修習生を修習に専念させることを目的として、現行司法修習制度と不可分一体のものとして採用されてきた制度である。医師養成の分野において研修医の生活を保障し、研修に専念できる環境を整えるために国費を支出するなどの動きがあるなか、これを廃止することは、21世紀の社会が求める高い質の法曹を養成するという新しい法曹養成制度の目的に背馳する。今次司法制度改革を実現するため、国は必要な財政上の措置を講じることが義務づけられているのであり(司法制度改革推進法6条)、財政事情を理由とした廃止は到底容認できない。


また、法科大学院の学費の低廉化、奨学金・授業料免除制度の充実等、法科大学院に関する経済的支援策が不透明かつ不充分ななか、給費制を廃止することは、新しい法曹養成制度の下において経済的事情から法曹への道を断念する者を生じさせることにも繋がりかねない。さらに、給費制は現行司法修習制度の下、法曹、とりわけ弁護士の公益性を制度的に担保する役割を歴史的に果たしてきたものであり、これを廃止することは、そのような法曹の在り方にも重大な影響を生じさせかねない。


なお、関係機関の中には、給費制を廃止して貸与制に切り替えた上で、任官者については当然に返済を免除するという議論が存在する。しかしこの議論は、実質的には任官者についてのみ給費制を維持することを意味するものであり、法曹三者の統一・公正・平等の理念に基づく司法修習を変容させ、官民格差を生じさせるとともに、弁護士任官の推進、法曹一元実現の阻害要因となるものである。仮に返済免除の対象に弁護士の一部が加えられたとしても同様である。


したがって、当連合会は、司法修習給費制の廃止に強く反対し、同制度を堅持すべく全力をあげて取り組むものである。


以上