「労働派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律施行令の一部を改正する政令要綱案」及び「同法律施行規則の一部を改正する省令要綱案」に関する意見機会の保障を求める意見書

2003年3月14日
日本弁護士連合会


 

本意見書について

意見

医療事業における労働者派遣事業につき、特別養護老人ホームなど社会福祉施設等の医療現場への医師及び看護師の派遣を認める結果になる改正案には反対である。


理由

1999年の労働者派遣法の改正において、派遣事業の対象業務が原則自由となり、派遣事業を認めることが適切でない一部の事業については適用除外業務とされた。その経過の中で医師、看護師等による医療業務については適用除外とされたものである。


今回の改正案は、「労働者派遣事業を行うことが適当でない業務として定められている医師法第17条に規定する医業等の範囲を、医療法に規定する病院若しくは診療所(厚生労働省令で定めるものを除く。)、同法に規定する助産所、介護保険法に規定する介護老人保健施設又は医療を受ける者の居宅において行われる医業等に限ることとする」としている。その結果、その他の医療については適用対象業務となり、例えば特別養護老人ホーム、身体障害者療護施設の診療所、デイサービス等について派遣事業が解禁されることになる。


もともと医療業務について派遣事業の適用除外としたのは、医療関係業務について派遣事業を認めることは、適正な医療の確保、医療の安全性の確保の面から適当でないという理由による。医療は直接人の生命健康にかかわるものであること、医療は専門職によるチームにより行われるため関係者の十分な意思疎通が必要であること、医療業務に派遣を認めることは医療事故の責任の所在が不明確になること、コストダウンのために派遣労働に切り替えることも想定され医療サービスの水準低下につながるおそれがあることなどを考慮すれば、社会福祉関係の医療施設においてもこれらの事情は何ら変わりはない。


上記の理由により、特別養護老人ホームなど社会福祉施設等の医療現場への医師及び看護師の派遣を認める結果になる今回の改正案には反対である。


なお、医療の一部に派遣事業を認めるという重大な問題について、政令の改正という閣議決定で行うのでなく国会の審議を経る法律によるべきである。