個人情報保護法案及び行政機関個人情報保護法案に欠かせない条件倒産時におけるライセンシー保護に関する意見書

2003(平成15)年3月7日
日本弁護士連合会


本意見書について

1 第三者機関の設置

個人情報保護のための監視機関を第三者機関として設けること。


理由

民間に対する規制について、各省庁の大臣が迅速かつ適切に対応できるとは考えられない。現実には各大臣が監督することは実務的に不可能であり、そのことは実際の実務を担う各省庁の官僚についても同様であるから、規制はほとんど機能しないか、恣意的な監督権の行使がなされるかのいずれかでしかない。


国の行政機関等に対する規制については各省庁の自主的な判断に委ねざるを得ないところ、非公開処分が情報公開審査会で次々に否定されているという情報公開法の運用実態からすると、国の行政機関等が常に適切に判断できるとは到底考えられない。


適正かつ実効的な規制の実現という観点からすると、スウェーデンのデータ検査院のように特定の省庁とは別に独立した第三者機関が監視する必要がある。


2 民間規制の限定化

当面、個人信用情報、医療情報、教育情報など、国民だれもが強い不安を感じている分野に限った個人情報保護制度に限定すること。


理由

あらゆる生活場面でのコンピュータの急速な普及と、今後の急速な展開を考えるとき、個人情報の保護は意識的・積極的に技術的・法律的に取り組んで行かなければ、実効性を持ち得ないことは明らかである。しかし、規制の必要性とその内容に関する社会的要請は、あらゆる民間分野において一律ではない。これを強引に一律に規制しようとすることは、一方で規制としてほとんど実効性を持たず、他方で規制が厳しすぎるという事態を必ず生じる。当面、民間分野において至急実行されるべきは、個人信用情報、医療情報、教育情報などである。そこでの経験ないし実績をもとに他分野における個人情報保護制度が作られて行くべきである。


3 個人情報ファイル簿の作成と公表

国の行政機関等が保有している個人情報についてはすべてファイル簿を作成し、極力公表すること。


理由

国の行政機関等がどのような個人情報を収集管理しているかが分からなければ、自己情報開示請求権等の個人の権利を実行することができないし、個人に権利を認めない場合であっても、ファイル簿さえ明らかにしておかなければ、国民として特定の種類の情報が収集利用されることの問題性を検討することができない。本人に開示できない個人情報であっても、それがどのようなものであるかはファイル簿として明らかにされるべきである。


4 利用目的変更等に関する本人への通知

利用目的の変更、目的外利用、外部提供等、収集当時に予定されていなかった利用はこれを許さず、改めて本人から個人情報を収集しなければならないとするか、本人に事前に通知して異議を述べる機会を与えるか、いずれかの方法によること。


理由

本来の収集目的以外に利用されることについて手続的に本人が事前に関与できるようにしておかないと、本人にとって自分の個人情報がどこでどのように利用されているかわからないという事態が生じ、開示請求権等の権利を実効的に行使することができない。特にデジタル化された個人情報は一旦目的外に利用したり外部提供したりすると、もとに戻すことができなくなる可能性が極めて大きい。そうであるだけに、事前の本人の関与が手続的に保障されている必要がある。


5 裁判管轄

本人の居住する地域の地方裁判所に裁判管轄を認めること。


理由

開示請求権、訂正請求権、利用中止請求権が全国民に現実に保障されていると言えるためには、当該個人情報の保管者が東京の霞ヶ関にある各省庁であっても、本人の在住する地域の地方裁判所に提訴できるようにする必要がある。


最低限、以上のような修正の上で各法案が成立されるべきである。もちろん、これで個人情報保護の問題が解決するわけでもなければ、今後次々に様々な問題が起こってくることが十分に予想されるから、現実社会の必要に応じて臨機応変に法律を制定し、あるいは改正して行くことに積極的でなければならない。


以上