研修医制度改革についての意見書

2003年1月18日
日本弁護士連合会


 

本意見書について

一  はじめに

あるべき研修医制度を論じるために、(1)患者の権利を擁護する観点、(2)有効で実質的な研修の確保という観点、(3)研修医の社会的使命にふさわしい処遇を確保するという観点から検討する必要がある。


二  指導体制の確立と、研修医による診療行為の限定

1 指導体制を抜本的に改革すべきである。

現在の指導体制は、専任の指導医が不在であったり、研究や日常診療の合間に指導が行われるなど、適切な研修のための前提条件を欠いている。


研修指定病院の選定と、施設面、指導体制を確保するための評価システムを確立する必要がある。さらに、指導医には、研修指導のための時間を確保した上、研修医教育に対する手当等の経済的支援を、国の責任の下に行うべきである。


2 指導体制を抜本的に改革すべきである。

研修医は、当初から単独診療を行えるだけの能力を持っておらず、研修先医療機関における単独診療において不十分な診療が行われる可能性がある。従って、研修医の診療行為は、原則として、指導医の指示に基づき行われるべきである。研修医が単独でとりうる医療行為については、研修期間、取り扱い症例数等に応じ全国統一のガイドラインを作成した上で行われるべきである。


三  有効で実質的な研修の確保

1 プライマリ・ケアを中心とした基本的な臨床能力の習得を目的とすべきである。

ストレート方式の研修では、プライマリ・ケアを中心とした基本的な臨床能力が習得できない。従って、かかる能力の習得を目的とすることを明確にし、そのために、内科、外科、救急医療等の診療科および地域医療をローテーションする方法を採用すべきである。


2 人権教育を採用すべきである。

患者こそが医療の主体であり、医療における自己決定権を持つことを理解し、その尊厳を尊重する教育が行われるべきである。


四  研修医の処遇の改善

研修医の勤務状態は過密であり、患者に対する最善の治療、有効で実質的な研修を確保し、研修医自身の生命・健康を守るために、根本的に改善すべきである。


残業時間の総量規制を行うほか、単独の当直制度と直結したアルバイトを禁止すべきである。それを制度的に担保するために、研修医に対する奨学金制度の創設など、国の政策によって、研修医に対する経済的支援を制度的に行うべきである。


五 最後に

研修医と同様の勤務状況でありながら、無給のまま放置され、むしろ授業料を支払い続けている、医師資格を有する大学院生、研究生等に対する適切な処遇も求められる。


資料