商法等の一部を改正する法律案に対する意見書

2001年10月19日
日本弁護士連合会


はじめに

法務省の法制審議会は、本年9月5日株式制度の見直し、会社関係書類の電子化等を内容とする「商法等の一部を改正する法律案要綱」を決定した。


そして、これに基づきこの要綱を成文化した「商法等の一部を改正する法律案」が政府により今臨時国会に上程されている。


ところで、上記要綱は、先に法制審議会が公表した「商法等の一部を改正する法律案要綱中間試案」に揚げられた検討項目のうち、特に早急に立法化すべきであるとの要望が強い株式制度の見直し、会社関係書類の電子化等について、前倒しで要綱として決定されたものである。


当連合会は、先に公表された中間試案について、本年6月16日付で意見書を提出しているところであるが、今回の要綱及び法律案には、中間試案において、特に改正が提案されていなかったもの及び中間試案の内容が変更されたもの等があるので、改めて、下記のとおり意見を述べる。(なお、意見の内容を分かり易くするため、要綱に対する意見の形式で述べることとする。)


第一. 授権株式数に係る制限の緩和及び新株発行規制の見直し

特に、異論はない。


短期的な資金調達を一定の事業計画・資金計画の下で会社が行おうとするとき、資本市場の状況にしたがい、機動的に資金調達を行う(新株発行を行う)等の便宜を考え、一旦なされた有利発行(ないしは株主割当以外の方法による新株発行)に関する株主総会の決議を1年間という期間において、その有効性を承認することは必ずしも不当であるとは言えないものと解される。


第二. 種類株式
第三. 株式の転換
第四. 新株予約権
第五. 新株予約権付社債
第六. 株式交換等の場合の新株予約権の処理
第七. 会社関係書類の電子化等

いずれも、特に、異論はない。


第八. 計算書類の公開

会社は、取締役会の決議をもって、貸借対照表またはその要旨の公告の代わりに、貸借対照表に記載されまたは記録された情報を、5年間、電磁的方法により開示する措置をとることができるものとする、とされている。


この趣旨は、現在の公告の制度の外に加えて、会社が自らホームページを利用して計算書類を開示する制度を認めることにより、会社の負担を軽減し、かつ、開示の実効性を高めようとするものであると解説されている。


しかし、「広く全国に法務局が設置されている環境に着目して、会社の規模を問わず、計算書類を法務局に提出せしめることにより、公平なアクセス権を確保すべきと考える。」し、また、「自社ホームページへの掲載は、情報作成者と管理者とが一致することにより、情報改竄の恐れがあるので賛成できない。」(中間試案に対する当連合会意見書)ので当連合会の意見書の趣旨に添って再検討されるよう要望する。