人権擁護推進審議会の「人権救済制度の在り方について」の答申に対する意見の提出について(要約)

2001年12月26日
日本弁護士連合会


本意見書について

1.機能

答申も引用するパリ原則では、国内人権機関の主要な役割として、個別人権救済活動とともに、政策提言活動と人権教育活動を3本柱としてあげている。しかし答申においては人権委員会の機能は、個別人権救済活動を基本とし、政策提言活動及び人権教育活動の位置付けが極めて低い。この3点が人権委員会の基本的機能であることを明確に規定すべきである。

 

2. 独立性

人権委員会は、独立行政委員会とし、内閣府の所管とすべきである。答申は独立行政委員会としながら、法務省の外局と位置付けることになるようである。法務省は、人権擁護局をおいているが、刑務所、入国管理局などにおける人権侵害の実態にてらすとき、法務省はその所轄下においてすら十分人権を擁護してきたとは言いがたい。また法務省自身の部局や法務省と並立する他省庁の人権侵害事案の救済に対しては、法務省所轄では実効的に対処しうるか疑問がある。また人権委員会の重要な機能の一つである人権教育活動は、現行では法務省と文部科学省が担当することになるが、双方を統合的に担当するためにも法務省所轄ではなく、内閣府所轄が相当である。

 

3. 組織体制

人権委員会は、中央だけではなく、各都道府県あるいは関東、近畿などのブロック単位で設置されるべきである。被侵害者が簡易、迅速かつ容易に申し立てをおこなうためには地方に人権委員会がおかれる必要がある。またまた人権侵害は主として地域社会で発生し、その背景や原因も地域社会に根ざしている場合があるからである。

 

4. 公権力による人権侵害

公権力による人権侵害は、私人による人権侵害やメディアによる人権侵害と比べて、もっとも重視される必要がある。


また人権委員会の扱う公権力による人権侵害は、差別・虐待に限定せず、国際人権法、憲法、及び法律に規定される人権の侵害一般を救済の対象とすべきである。


公権力による人権侵害については、人権委員会に対して調査権限を与え、公務員または公務員であったものに対して公務上の秘密であることをもって供述などを拒む事は認めるべきではない。

 

5. 私人による人権侵害

私人による人権侵害は差別・虐待に限定せず、広く上記の人権の侵害一般を対象とすべきである。


私人に対する強制調査権限については、一定の範囲に限定すべきである。

 

6. メディアによる人権侵害

人権委員会にどのような調査権限、救済機能を付与するかは、人権委員会の独立度や自主的にメディアが設置した救済機関の実効性・救済方法などに相関する問題であるが、メディアによる自主的第三者機関が設置され、実効的に運営されている場合は、当該機関がまず優先的に取り扱うものとし、その機関の決定に被侵害者が不服の場合は、人権委員会に申し立てができるとすべきである。


メディアによるプライバシー侵害については、対象者を限定すべきではなく、刑事事件の被疑者被告人を排除すべきではない。しかし政治家、高級官僚及びその関係者に対するプライバシー侵害は公益性を尊重し、救済の対象から除外すべきである。