ダイオキシン対策推進基本指針に対する意見書

2000(平成12)年3月16日
日本弁護士連合会


本意見書について

  1. ダイオキシン類の毒性に鑑みると、できる限りその排出をゼロに近づけることが求められており、このような認識に立って各対策が講じられなければならない。
  2. ダイオキシン類の排出をできる限りゼロに近づけるためには、塩ビ製品等焼却等の処理をするとダイオキシン類を発生させる製品の製造・使用の削減、焼却等の処理によりダイオキシン類を発生させる旨の表示、廃棄物についての生産者の責任(拡大生産者責任)の強化などのダイオキシン類発生源に遡った上流対策に積極的に取り組むことによって、循環型社会を構築しなければならない。
  3. ダイオキシン類排出総量のできる限り正確な把握に努めるべきである。国が発表した発生源の排出量の目録(排出インベントリー)には、例えば農薬製造過程や焼却灰等の発生源が対象とされておらず、不十分である。
  4. ダイオキシン類測定にかかるデータの精度および公正さを担保するために、精度管理機関の創設、クロスチェックの義務づけ、調査分析過程および全データ(電子情報を含む生データ)の情報公開のほか、サンプリング、抽出・解析の全プロセスに住民が立ち会い、同一試料を採取してクロスチェックを行うなどの権利を保障すべきである。
  5. 高濃度汚染地域の住民の健康影響調査、焼却炉周辺の農畜産物調査、焼却施設労働者の健康調査、魚介類の調査などを実施する必要がある。安全宣言のための調査ではなく、汚染の原因究明に結びつく調査を行うべきである。調査結果については、個人のプライバシー保護に配慮しつつ、産地を含む情報公開を行うべきである。さらに、母乳汚染の深刻さと個人差が大きいことを考えると、希望者が母乳・血液検査を受けられるシステムを早期に確立すべきである。
  6. 排出総量を平成14年(2002年)度までに平成9年(1997年)比で9割削減という目標が定められているが、平成9年度の排出量は6330~6370gTEQであるので、9割削減してもなお約630gTEQの排出量となる。諸外国では、安全性の見地から年間排出量を数グラムとする目標を掲げている国もあり、わが国でも目標値をもっと厳しく定めるべきである。また、達成スケジュールも短縮化すべきである。
  7. 施設の大型化・広域化が進められているが、このような対策は、莫大な費用とエネルギーを浪費するものであるのみならず、ゴミの減量やCO2削減の基本方針にも逆行する。さらに安全性の問題もあり、決して賢明な方法とは言えない。発生源対策の方がはるかに費用も少なくてすみ、かつ効果的である。
  8. TDIについては、今般、4pgTEQ/kgに見直されたが、ダイオキシン類の毒性等に鑑みると、TDIは本来ゼロをめざすべきものである。WHOの報告書でも、当面4pg/TEQkg以下としながらも、究極的には1pg/TEQkg未満となるよう努めるべきことが明記されている。したがって、わが国においても、1pg/TEQkgを目標値として段階的に強化するためのタイムスケジュールを明確に定めるべきである。
  9. 大気・水・土壌の環境基準および排ガス基準値については、総じて現状追認的な姿勢にとどまっており、安全性の見地からもっと厳しい基準値を設定すべきである。特に、大気の排ガス基準値は、80ngTEQ/‰の暫定値をそのまま踏襲するなど国際的水準をはるかに下回っており、早急な改善が望まれる。
    また、食品基準を早期に設置すべきである。
  10. 総量規制については、その対象を指定地域内の排ガスのみに限るのではなく、飛灰、焼却灰、排水も対象とし、さらに個別施設ごと、工場・事業場全体や地域単位の各総量規制を導入する必要がある。
  11. 50kg/h未満の小型焼却炉の据切りを認めず、全施設を規制対象とすべきである。
  12. ダイオキシン類汚染の地域特性を勘案するならば、地方公共団体、特に市町村の役割を強化する必要がある。ダイオキシン法の運用にあたっては、市町村の権限を都道府県と同等に認める取り扱いをすることが望ましい。


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