富山刑務所における受刑者の医師の診療を受ける権利に関する人権救済申立事件(勧告・要望)

 

法務大臣宛て勧告、富山刑務所長宛て要望

2017年3月31日

 

 

富山刑務所において、被収容者であった申立人らの医師による診察を希望する旨の申出に対して、医師による対面診療が実施される場合は限定的であり、医師による対面診療を実施しない場合における看護師又は准看護師による聴取内容の医師への伝達がいずれも口頭によるものであり、医師に対する適切な報告及び医師からの適切な指示があったのか疑いがある状況は、被収容者が社会一般におけるのと同様の医療を受ける権利を侵害するおそれがあるとして、以下のとおり、富山刑務所長に対し要望し、法務大臣に対し勧告した事例。


1 富山刑務所長宛て要望
被収容者から医師による診察を希望する旨の申出がなされた場合は、原則として医師による直接の対面診療を実施すること、やむを得ず実施しない場合は、医師が適切な判断をできるように、看護師等が医師に対して、対面診療に代替し得る程度の被収容者の心身の状況に関する有用な情報を速やかに文書にて提供し、被収容者の医療を受ける権利が侵害されないようにすることを要望する。

2 法務大臣宛て勧告
(1) 全国の刑事施設に対して、被収容者から負傷し、又は疾病にかかっている旨の申出があった場合、少なくとも当該申出が医師による診察を求める趣旨のものであれば、以下の対応をすることを指導すること、
① 原則として医師による直接の対面診療を実施することとし、やむを得ず実施しない場合は、医師が適切な判断をできるように看護師等が医師に対して、対面診療に代替し得る程度の被収容者の心身の状況に関する有用な情報を速やかに文書にて提供すること、
② 医師による診察の要否は医師のみが判断することを指導又は助言すること、
(2) 以上の趣旨に沿って被収容者の保健衛生及び医療に関する訓令(平成18年5月23日付け法務省矯正医療訓令第3293号)10条を改正すべきこと、
を勧告する。

 

執行後照会に対する回答

法務省

<法務省矯正局総務課長名回答・2017年11月1日>


(第1 勧告の趣旨1(1)への回答)
医師による直接の対面診療の前に看護師等において診察の緊急性を判断する場合があるのは、作業を免れるために病気を装って申出をする者や、医療費が国費によって賄われることから過剰な投薬等を要求する者が存在するなどの事情から、医療体制に制約がある中、全ての愁訴について医師が直接確認すると、かえって必要な診療に当てるべき時間が不足し、真に医療上の措置を必要とする者の診察が後回しになってしまうおそれがあるためであり、刑事施設において適切な医療を行う上で効率的かつ効果的な行政運営として必要やむを得ないものと考えている。
また、看護師等による医師に対する情報提供を文書化することは、事務量の増大を招き、緊急性を要する患者に対する迅速な対応ができなくなる可能性があるため、慎重に検討する必要がある。


(第1 勧告の趣旨1(2)への回答)
診療の要否判断は医師が自ら行うものであることは当然であり、これまでも適切に実施しているところではあるが、看護師等に対する研修において改めて注意喚起を行ったところである。


(第1 勧告の趣旨2への回答)
上記理由により、現時点においては当該訓令を改正する必要はないと考えている。



富山刑務所

<富山刑務所長名回答・2017年11月2日>


被収容者から膨大な医療に関する申出がある中、これら全てに対して直ちに医師による診察を行うことは困難ですが、医師が診察の要否を判断する際は、看護師等から必要な情報を適切に伝えているところであり、今後も、引き続き適切な医療の提供に努めてまいる所存です。